私は今、2匹の保護猫と暮らしている。平和で穏やかな毎日だ。
以前の私は夜中まで仕事をしながら、職場に隣接した実家で暮らす、両親の見守り介護に追われていた。
そんな生活が一段落したのは、二人がホームに入居したからだ。それを機に、仕事場も自宅へ引っ越すことにした。
また同時期、両親が自宅を離れることを察知したからか、共に暮らしていた16歳の愛犬が虹の橋を渡った。ホームでは動物を飼うことができない。
ペットロスになった両親の助けになりたいと思ったものの、かといって私が代わりに新たに犬を飼うのも難しい。悩んだ末、初めての猫を迎えることになった。

 実はもう一つ、私には実現したいことがあった。以前通っていたカーブスへの復帰である。
数年前、ある病気をきっかけに、私は通っていたカーブスを退会することになった。主治医から「このまま運動し続けたら、歩けなくなりますよ」と、脅されたのだった。
週3日、気分転換として仕事の合間に楽しく通っていた私にこの宣告は辛く、できれば退会は避けたかった。しかし、歩けなくなるのも困る。この頃は仕事をしながら大学院に通い、あわせて両親のケアもするという、体が幾つあっても足りないような生活をしていたからだ。当然のことながら自分の食生活や運動、睡眠を顧みる余裕など、当時は全くなかった。
 運動はゼロ、授業の合間にコンビニのお握りをほおばる食事、夜遅く飲み会で食べ、寝るのは明け方。年齢的にも代謝が下がる一方で、仕事に加え、慣れない勉強でストレスもかかる毎日。こんな生活を続けていたら、太らない方がおかしい。今なら当然気付くことも、当時は毎日をやり過ごすだけで精一杯だった。その結果、あっという間に、2年間で20キロも体重が増加してしまった。
「これはまずい!何とかしなければ!」さすがの私も焦るものの、気持ちばかりが先行し、何もできないまま、いたずらに時間だけが過ぎていった。
大学院修了後、時を同じくして運動禁止令を出していた主治医が引退することになった。新たに通い始めた病院で、今までとは逆に「運動はしてよい。むしろ、した方が良い」と言われたのは、ようやく両親のホームが決まり、職場も生活環境も変わり、自身の健康を見直す時間ができた頃だった。気付けばカーブスを退会してから、早くも10年近くが経っていた。
 加えて、私が紹介した母は、入居したホームに近いカーブスに異動し、いつしか私を超えるプラチナ会員になっていた。そんなことも、はやる気持ちに火をつけていた。
こうして自宅での仕事と猫がいる生活にも慣れ、迎えた新年、私は真っ先に近くのカーブスへと向かった。ようやく久しぶりに運動することができるのだ!
しかし、10年振りのマシンは運動不足の身体にとても重く感じ、初日は使い方を思い出すだけで精一杯。「こんなに体が鈍っていたのか」という現実にショックを受けたが、同時に、体を動かすことの喜びも思い出し、その夜は久しぶりに熟睡することができた。翌朝の晴れやかな目覚めは、長らく忘れていた感覚だった。
 我が家に迎えたばかりの頃は、猫達も私と離れて眠ることが多かった。しかし最近は、当たり前のように私のベッドを占拠し、先にど真ん中で寝ている。その為、後から眠る私に残されたスペースは僅かだ。仕方なく、無理やり体をS字にして寝ることも多い。その結果、朝になるとあちこちが痛い。それでもカーブスへ行くと、不思議なくらい体の不調は解消される。
また、雑事に紛れ、暫く行けない日が続くと、コーチから気遣う連絡も入る。これも私には何より心強いのだ。「私の安否を気遣ってくれる人がいる」というのはとても有難い。一人暮らしの私が倒れたら、猫達の世話も困ってしまう。そう考えると「彼らの為にも、いつまでも健康でいなければ」という気持ちにさせられる。
飽きっぽい、どちらかといえば三日坊主の私だが、今のところ、カーブスだけは続いている。その秘訣は、「無理せず、楽しく」を自分のモットーにしているからだと思う。
 何しろ嫌でも30分しかいられない。コロナ禍でストレッチも無くなった分、更に帰りは早くなり、仕事や家事の合間に、さっと来てさっと帰れる。急いで帰宅し、ストレッチをしてプロテインを飲むから、寄り道もめったにしない。行く前に予約も要らないし、女性ばかりだから、服装や化粧などに余計な気も遣わない。そんなシステムが私にはぴったりだからだろう。
 また、一人で仕事をしている私には、下手をすると丸一日、猫以外に話す相手がいない。それでもカーブスに来れば、コーチやメンバーの方々と、他愛ない会話を楽しむことができる。コロナ禍で、人と会うこともままならない中、僅かでもおしゃべりができるのは、精神的にとても安らぐ気がする。
残念ながら、体重はまだまだ以前の数字に程遠い。そして、猫達はこの先も引き続き、私のベッドを占領していくだろう。私が日々の肩こりや寝違えから解放されることも、多分ないと思っている。それでも猫達とカーブスは今の私にとって、かけがえのない癒しと生きる支えである。
猫達がいる限り、コーチたちの力を借りながら、これからも心身の健康を維持していきたい。私にはカーブスが必要不可欠であり、張り合いになってくれるからだ。
猫達がギネス記録の年齢を更新するか、はたまた母共々、100歳まで元気にカーブスへ通い、表彰されるか。そんな大いなる野望を掲げ、これからも細く長く諦めずに、続けていきたい。
「ある日、ふと気付いたら、再び元の体重に戻っている」などということを妄想しつつ、今日も私は元気にカーブスへと向かっている。