三年連用日記の一冊目、二〇〇一年十一月二十七日には
 還暦だ。
 
 あの頃の私は、企業研修生として来日した外国人に「日本語トレーニング」をするというボランティア活動で、元気に飛び回っていた。

 子供の頃から、痩せ型体型。食べ物の好き嫌いは多かったが、仕事でも家庭でも支障なく、年に何度か夫とドライブ旅行をするのが楽しみだった。

 しかし、振り返ると、その後は体調異変に苦しんだ。

 食事の時、箸や茶碗を持つ姿勢、掃除の箒やモップを動かすのさえ腹に力が入らない。そして外では坂道や階段を歩くとヨレヨレと体がぐらつく。スカートや、下着のゴムが腹に食い込んで苦しい。腹圧ベルトや、サプリメント等試してみるが、どうも効果がない。

 そんなある日、「駅前の大型商業施設にカーブスオープン」の折り込み広告。

 三年連用日記の六冊目、二〇一六年十一月十九日
 カーブス初体験。
 
 十二時予約。スタッフの皆さん感じが良い。よし、一歩踏み出すことにする。
 
 体験後早速カーブスに入会したが、せっかちな私には、なかなか成果が感じられない。

 それからは、何かと口実を作って休むことも多くなった。

 「今日はカーブスだね」
 夫の言葉が憎らしい
 「今日は行かないの!」
 プロテインも飲んでいる、でも、私の体に変化は感じない。
 
 「あれ!」
 ブヨブヨと揺れていた私の太もも辺りの筋肉が揺らがない!コロナに怯え友人に会う機会も減るなか、孫娘のように若いコーチらの笑顔に元気をもらい、週三回は通うようになっていた。いままでは、嫌いと言って食べなかった、鶏肉、豚肉、納豆なども、タンパク質の宝庫だとおもい、食べる努力をした。
 「ねぇ、変化ありよ、私の太ももが硬くなってる!」
 夫はうなずきながら
 「カーブスのおかげだね」
 
 久しぶりに「安芸の宮島」へ旅をした。
 
 紅葉の階段を上ったり、下ったり、潮の引いた大鳥居まで歩くこともでき、夫とまた驚いた。

 三年連用日記八冊目、二〇二二年二月十七日
 初代店長の三村さんに再会

 「五年前の広美さんの姿を皆さんに見せたいわ」と。
 本当にうれしい!

 この六年間、「お腹に力を入れて、腹筋を意識」と指導を受けてきた。

 私は漸く、腹筋の大切さに気がついた。あの、苦しかった過去は腹筋不足だったことも。

 二〇二三年三月
 金沢文庫駅前店の青い壁に貼り出された「私がカーブスにくるわけ」には

 「肩がらくになるから」
 「予約がいらないから」
 「三十分で終わるから」
 「手軽ですっきりするから」幾項目もあるが一番は
 「コーチがいいから」青や黄色のシールであふれている。