カーブスのドアを開けると、「むつみさん、こんにちわあ」と、高く張りのあるコーチ達の声が次々と出迎えて下さる。ああ、今日もカーブスに来れたんだ、との喜びが湧いてきて思いきり手を振って答えている私である。
 
 店長をはじめとするコーチ達のこの明るさと元気はどこからくるのだろうか、という疑問は入会当初から抱きつづけている。健康や筋トレに関する豊富な知識を惜し気なく披露してくれながら、メンバーのW.O.の手助けに余念のないコーチ達の熱意。必ず全てのメンバーに話しかける公平さ。その話の内容にはマイナスを感じさせるものは全く無く、最初から最後まで、メンバーの考え方や姿勢、W.O.の一つ一つをほめながら、より善くなるようにと励ましつづける信念のようなものはどこからきているのだろうか。入社時、社員研修のようなものは必ずあると思うのだが、その時に鍛えられるのだろうか、などと考えつつ、私は右肩を少しかばうような思いでW.O.に入ってゆくのである。
 
 数年前から右肩が凝りやすい傾向にあるのは常に感じていた。特にテレビ体操で腕を回す時などに違和感があったのだが、ある時から腕を回しにくいだけでなく、痛みを伴ってきたことからおかしいなと感じ始めていた。
 
 ふだんから消極的な言葉は出すまい、暗い話はするまいと決めていたのに、ある時ついポロっとカーブスの友人にぼやいてしまったのである。親切な友人は「整形外科で診てもらった方が良いわよ。凝りだけで何ともなければ安心できるし、他に原因があるならそれも解るだろうし」と助言して下さったのである。友人の言葉がとても有難く、次の日私はすぐに評判の良い整形外科に出向いたのである。
 
 結果は「右肩腱板断裂」という診断であった。「左右の方には四本ずつの腱があり、あなたのは右肩の腱四本中の一本が切れているんですね」との事。「えーっ、そんなことってあるんですか?」「結構ありますよ」「なぜそうなるんですか?」「劣化ですよ。つまり年齢ってことです」「(ゲッ)!」
 
 その後のMRI検査で診断が確定され、リハビリに通うようにと宣告されたのである。痛みのひどい初期の頃にはヒアルロンサン注射を週一回、五週にわたって射ったこともある。
 
 整形外科に通い始めてみると、「結構ありますよ」というドクターの言葉通り、同じような病名と症状の人に次々と出合い、しかもカーブスのメンバーさん数人ともそこで再会したのである。挨拶だけしていたメンバーさん達と病気つながりで親しくなれた点は有難かったと思えているが。
 
 中には断裂した腱をつなげる手術をしたという人もたくさん現われた。更には左右の肩の腱を同時に(あるいは時をおいて)切ってしまい、痛みに耐えかねて両肩を手術したという強者もあらわれてびっくりしたものである。術後は半月は固定したまま動かせないので、仕事にも行けない、家事もできない、風呂さえも一人でははいれないという何重苦の生活を強いられるという。しかも固定具を外したあとは、衰えてしまった体力と筋力に愕然としてしまったのだともいう。
 
 幸いに私自身は初めこそ痛みはあったものの、徐々にそれも遠退き、日常生活にはほとんど差しさわりのない状態まで回復したのである。大好きなカーブスに毎日通いたい、リハビリにも週一・二回は通いたいとなると、夕方のW.O.の時間が午前に変わることがある。コーチも敏感に察知して下さって「今日はお忙しいんですか?」と聞かれる。「そうなんです。今日はドクターとデイトして来ます」と答えるとケラケラ笑って下さる。その明るさに元気をもらって通いつづけ、最近ではコーチに「コーチ以上に出席率が良いね」とからかわれるほどである。
 
 全てのメンバーの情報はどのコーチにもインプットされているらしく、「体調はどうですか?」の次に、「肩の具合はどうですか?」とか、「腰は痛みませんか?」などと心配して下さる。弱音を吐きたくない私は「絶好調です」「はなまるです」「ベリーベリーグッドです」などとその日の気分によって使い分けている。すると、あるコーチは「むつみさんはいつも前向きな言葉を下さるので嬉しいですね。今日ははなまるですか?とても良いですね」などとほめて下さる。"豚もおだてりゃ木に登る"タイプの私は、コーチに喜んでもらいたくて、又、新たな言葉を考え出すのである。
 
 余談になるが、先日うれしい話があった。「私は筋トレで体を鍛え、言葉で自分のお尻を叩いて気分を鼓舞しているんですよ。カーブスでコーチに体調をたずねられたりすると"今日もハッピー、絶好調"と答えたり、日記に書いたりしてるんです」とどこかでしゃべったことがある。その話を聞いて感動して下さった中小企業の会社社長が、会社の封筒にその言葉を刷り込んで下さったのである。枠にかこまれた社名の上に「今日もハッピー、絶好調!」と確かに印刷してある。「この封筒、一枚ちょうだい」とおねだりしていただいて帰って来たものである。
 
 こうして皆さんに喜んでいただけるのも、カーブスに八年間通いつづけているうちに、カーブスの熱気に溢れた雰囲気と、メンバーの健康生活を手助けしたいという温かな指導によって育てていただいたおかげなんだなあと思えるのである。
 
 肩の腱板断裂を経験した人から言われたことがある。「手術もしないで痛みが無くなるなんてことあるの?」と。「そう、あるのよね。だって私、カーブスで筋トレして筋肉を鍛えているし、整形外科でリハビリしてもらっているし、自分でも"今日もハッピー、絶好調"と言いつづけてメンタルトレーニングしてるから、もう恐いもの無しの心境よお」と答えている。
 
 "今日もハッピー、絶好調"と唱えつつ、それでは今日もカーブスに行って来ます。