五年前、カーブスエッセイで「準賞」をいただき、マガジンに載せるための写真を撮る時、カメラマンの方から「もう少し胸を張って」と言われ、自分ではピーンとしていたつもりでしたが、腹圧を入れ、頭を空の方に四〜五センチ伸ばすような感覚で、背筋を伸ばすと、姿勢が良くなりました。普段、猫背気味の私は、それ以来、姿勢を正すことに、神経を集中させています。
二十年前、クラブのオープンに合わせ、スタッフが、カーブスの紹介のために歩き回っていました。その時、自営業で店番をしていた私に、「女性のための筋力トレーニング」「忙しいスケジュールの中でも通える三十分間ワークアウト」という魅力的な言葉を投げかけてくれ、運動音痴な私は、不安もありましたが、プレオープンのお店に入っていきました。
油圧式のマシンは、自分の体力に合わせて動かせるので、何とかやることができました。車で十分程の場所だったことや、体重を落としたいということもあり、即日入会しました。週二〜三日通い、三か月経った頃からウエストや体重が減少してきました。一年後には、体重六キロ、ウエスト九・五センチ、お腹まわりは七センチ減っていました。驚くばかりです。五年程、順調に通っていたのですが、夫の看病と仕事をやりこなすことで手一杯になり、止む無く退会しました。その間に、左手が上まで伸ばせなくなり、五十肩の症状が現れ、夫が他界し、少し時間が取れるようになった時に、再入会しました。両手で上まで持ち上げるマシンは、最初、左手を添え、右手でゆっくり持ち上げていましたが、一か月を過ぎた頃、両手で持ち上げることができました。筋力が付いたようです。ひざも、変形性膝関節症と診断され、ヒアルロン酸注射を打っていた時期もありますが、加減しながらマシンをやっているうちに、症状は回復しました。
昨年、弟と実母が亡くなり、仕事も退職しましたが、まだ働ける体力はあるなと思い、以前と同じ職場に復帰しました。休職中も、カーブスに通って体力と気力を落とさぬ様に努めました。カーブスに通うという習慣がなければ、ただ家に居て、引きこもっていたかもしれません。
二十年間、途中一年程退会はしましたが、私は、間違いなく変わりました。体重は六・五キロ、ウエストは十一センチ、お腹まわりは九センチ減少しました。体年齢は五十六歳です。実年齢より十三歳若いという測定結果に、続けていて良かったと感じています。
それにも増して感謝しているのは、前向きな性格になったことです。元来、引っ込み思案で、自分の意見を主張するタイプではなかったのですが、体型に自信を持つことができたこと。免疫力が付き、病気をしなくなったこと。ひとり旅を楽しむ体力や、心のゆとりもできてきました。
 十五年前、夫は、大腸がんの末期だと告げられ、私たち家族は延命を願い、一丸となって、闘っていました。手術をし、抗がん剤治療や漢方薬にも頼り、仕事も続けながら、生きることに精一杯の努力をしていました。
亡くなる半年前、夫の運転で、秋田の角館へ桜を見に行きました。初めて二人で人力車に乗り、車夫と会話をしている夫の話を聞きながら、武家屋敷通りのしだれ桜を、眺めていました。夫の身体は衰弱しており、体調を気にしながらの旅行だったので、楽しむという余裕は、ありませんでした。夫の写真を撮る時に、険しい顔をしていたので、「笑ってよ」と声をかけると、無理やり作り笑顔をしてくれました。ピンクの桜並木が続く桧内川の河川敷を歩き、幸せをかみしめていました。
終末期には、食事や水分さえも制限され、余命一〜二か月と聞かされていた時にも、背中に点滴を背負い、仕事をこなしてくれました。
夫が他界してから、七年経った頃、もう一度、夫との思い出の場所に行ってみたいと思い、自分で宿を取り、行程も決め、新幹線を乗り継ぎ、片道五時間ほどかけて「角館」へ向かいました。ひとり旅デビューです。
同じ道を歩き、同じ場所を眺め、「独りになったのだな〜。」と、寂しさが込み上げる旅ではありましたが、自分の殻を破る第一歩となりました。こうして旅ができるのも、健康な身体、体力があるお陰です。カーブスに通い続けているという実績は、決して無駄にはなりません。介護を経験し、死と向き合い、乗り越えられたのも、カーブスに出かけ、マシンに集中し、スタッフや一緒に運動をする顔なじみの方たちとの接点があったからこそ。精神力を保っていけた秘訣だと思います。
 朝起きて、食事をして、活動を始める。一日が無事に終わり、安心して眠りにつける。今、こういう状態の中にいることが、有難いです。幸せは、待っていて、やってくるものではありません。感じ取るものです。幸せだと感じる瞬間が、多くなりました。
このカーブスエッセイを書いていて、今、この瞬間も、夫のことを思い出し、カーブスに通い続けている体験を掘り起こし、自分を見つめ直す良い機会ができ、明日への一歩を踏み出す、貴重な時間を過ごしています。
趣味で始めたオカリナの曲の中に、「いのちの歌」があり、「本当にだいじなものは、隠れて見えない。ささやかすぎる日々の中に、かけがえない喜びがある。」という歌詞があります。何事も無く、淡々とカーブスに通い、維持されている体力。筋力の低下を阻止するための運動。これを体験できていることは、私にとって、かけがえない喜びです。
 これからも、「胸を張って」と言われたカメラマンからの言葉を忘れずに、カーブスとのご縁を、長く続けていきたいと思っています。