私がカーブスの名前を耳にしたのは、今から15年以上も前のこと。テレビでアメリカから新しい形式のジムが上陸したと伝えていた。いくつもの器具が円周上に並び、その間に足踏みするボードがあり、30秒ずつで移動しながら回っていくという。
 なんだかせわしなくて、そんなやり方で効果があるのだろうかと不思議に思ったものだ。
 
 その頃、私は従来型のジムに通っていた。それが当たり前の形式であったので、新しい形式は、経営上手の人たちが目新しさを追求した面白いものを考えたものだという程度の認識でそのジムのインストラクターに話した記憶がある。
 それから10年余り経ったある日、バスの中で、お顔だけは見たことがある方が突然カーブスの話をはじめた。混んだバスの中で、立ったままの隣同士、私は別に言葉を交わしたいと思っていたわけではないのに、その方は終点までの10分位、カーブスがどんな所かを話し続けた。
 別れ際に、カーブスはあちこちにあるから調べてごらんなさいと言って、ご自分の名前と所属する教室を教えて下さった。なぜか私は素直にスマホで調べると、最寄り駅のスーパーの3階にあることが分かった。しばしば行くところではなかったので知らなかったのだ。
 
 それまでの私は、体を鍛えることの大切さを感じていたし、体を動かすのが好きでもあったものの、いくつかのジムへの入退会を繰り返していた。自分の生活の中にジム通いの時間をうまく入れ込めないでいたからだった。
 見学に行くと、マネージャーさんは私のふっくらぷよぷよした体を見てか、筋肉を鍛えることの大切さを熱く語り、ご自身がカーブスの創業者ゲイリー・ヘブンの考え方に共感して誇りと自信をもって仕事に携わっている様子が伝わってきた。
 
 取り敢えず通うことにした。行くたびにコーチがついて一台ずつのマシーンの使い方を教えて下さりながら一巡し、しかるべき筋肉が動いているかも必ず手で確かめて下さった。なかなか使い方のポイントがつかめなかったが、何度でも優しく、丁寧に、励ましながら教えて下さった。
 最初のうちは忙しかったこともあり営業時間終了間際にしか行けないことも多かったが、30分くらい前までに入室すれば大丈夫と教えて下さり、終了時間ギリギリまで嫌な顔一つせず親切に教えて下さったので、通う気持ちを一層押されたのは感謝している。
 
 今、気が付けば5年通うことができゴールド会員にもなった。最初のうちは通っていればよい位の気持ちでいたので、月に1~2回しか行かなかったこともあった。しかし、計測の結果を見たり、カーブスマガジンで結果が出ている方々の話を読んだり、専門家の先生方の研究結果を読んだりするうちに、本当かしらという気持ちとともに、言われている通りにやってみようと思うようになった。
 コロナ禍で時間に余裕ができたこともあり、今は週3回通うことを目標にしている。
 
 これだけ続けることができたのは、カーブスのスペースが合理的に出来ていることも一つの大きな理由だと思う。入口から入り、着替え、トレーニング、ストレッチ、プロテインカフェなどすべてをこなすための移動距離が少なくてすむ広さなので、滞在時間も短く収まり、私にとってはありがたかった。
 
 問題の効果なのだが、体脂肪率、骨格筋率、体年齢など、計測結果は残念ながら劇的には変わっていない。しかし、自分の体感としては嬉しい変化がある。動きが軽くなり、家の2階に行くのが億劫でなくなったこと、水を飲むときむせなくなったこと、猫背の背中の筋肉を動かす感覚が分かってきたことなどである。
 そして、お腹をへこませるという感覚が分からなかったのがお腹をへこませて歩けていたり、上体が横に揺れて心もとなく歩いていたのがしっかりと歩けるようになってきたことなどに気づけたことも嬉しい。
 
 以前がひどかったということなのだが、私としては、全身に神経が届いてきた感覚を持てるようになりありがたいと思っている。
 通い始めは、マシーンを、筋肉というより力で形だけ動かしていた。けれども、次第に筋肉を動かす感覚が分かってきて、更に「チャレンジハード」の気持ちでやってみると、トレーニング後、体の芯から疲労感を感じるようになってきたので、以前よりしっかり筋肉を動かせているのかと思うと嬉しい。
 
 カーブスを知った頃は目先を替えた面白いやり方だと思ってしまったが、今では、奥が深く、よく考えられたシステムだと思うようになった。だからこそ、基礎の動きをしっかりと、よりキッチリすることが大切だと思っている。
 計測のたびに、「現状維持できていますよ」と言われ、私には慰めとしか聞こえなかったが、年を重ねてきて「現状維持」ができていることこそが大切なのだと分かってきた。
 
 カーブスは年を重ねるにつれて益々必要な場所のように思う。コロッと別の世界に行くのが私の理想だが、それまではできる限り通いたいところだと思っている。
 バスの中で教えて下さった方、ありがとうございました。