「腹圧を意識してみましょう」
「太ももに力を入れてみてくださいね」
コーチはやさしく声をかけてくれる。でも正直なところ、私は戸惑っていた。
最初は、すべてが「全身運動」だった。カーブスのマシンを使っても、どこに効いているのか分からない。ただ必死に身体を動かすだけ。気がつけば息が上がり、腕も脚もだるくなる。しまいには手足がつり、マシンが当たる皮膚には点状出血までできた。
"意識する"とはどういうことなのだろう。脳と身体の感覚は、本当に結びついているのだろうか。筋肉を"感じる"という感覚は、一体どこにあるのだろう?そして答えが見つからないまま、二周が終わる。それが私の筋トレだった。
それでも、不思議とやめたいとは思わなかった。
30分という短さ、明るい音楽、そして名前を呼んで励ましてくれる空間。私にとってカーブスは、気持ちが少し前向きになる場所だった。
「今日も来られましたね」
その言葉を聞くたび、今日もちゃんと、自分の身体のために来た、と思っていた。気がつけば、ほとんど毎日のように通っていた。
「私より出勤してますね、笑」
コーチにそう言われたこともあった。恥ずかしいやら、うれしいやら。身体と心が少しずつ変わっていく、その小さな変化が楽しかった。でも、筋肉を"感じる"という感覚はまだなかった。
そして、入会から2年ほど経過したある日のことだった。
ペック・デックで腕を外から内側に戻した時、右肩甲骨のあたりで何かが動いた気がした。私は昔から肩こりがひどく、特に肩甲骨の周りがいつも痛かった。自分で押しても、ちょうど気持ちの良い場所が見つからない。
「誰か、この凝りをピンポイントで押してくれないかな」
そんなふうに思うことがよくあった。ところが、その日。ペック・デックを動かした瞬間、肩甲骨の周りの筋肉が内側に動き、凝りがマッサージされるような感覚が分かった。
――あ!これ?!
なんて気持ちのいい瞬間だろう。筋肉が動く感覚と、凝りがほどけていく感覚が同時にやってきた。そのとき私は初めて思った。
ああ、これが筋肉を"感じる"ということか!
それまでは、筋肉とは教科書の中のものだった。しかしその日、自分の身体の中に腑に落ちた感覚があった。脳と体感がつながったその瞬間、なんとも言えない清々しさが体に広がった。それからしばらく、私のお気に入りマシンはペック・デックになった。
次に"感じた"筋肉は、ヒップ・アブダクターの筋トレだった。
「腰を後ろにつけてくださいね」
コーチによく言われていた言葉だったが、実は意味が分からなかった。ところが骨盤を後ろに押しつけてみたある日、内ももに力が入るのがはっきり分かった。
――これか!
次はグルート。
「もうダメと思ったら、あと一歩後ろへ蹴ってみましょう」
コーチに言われた通りにすると、その一歩後ろでお尻の筋肉がきゅっと締まった。お尻が小さくなるような感覚。思わずうれしくなった。スクワットでも同じだった。立ち上がるとき、「お尻の付け根に力を入れてみてください」と言われ、その通りにすると、そこが働いているのが分かった。
私はようやく理解した。マシンで筋肉を鍛えるとは、こういうことなのだ。それまでの私は、ただ全身を必死に動かしていただけだった。でも今は違う。同じ二周でも、運動の「濃さ」がまったく違う。狙った場所に、きちんと届く。
「ターゲットマッスル」
その言葉の意味が、ようやく身体で分かった。今ではマシンに向かうたび、私は考える。今日はどこに効かせようかと。30秒が終わる頃、その筋肉は確かに疲れている。つまり私は、ただ動くのではなく、狙って動かすことができるようになった。筋トレを継続した自分、励ましてくれたコーチ、素晴らしい!
ありがとうございます!