「おばちゃんも退職したなら、一緒にカーブスへ行けばいいよ」と、姪っこの一声で、義姉が招待状持参で自宅に現れたのが、昨年の四月だった。
しかし、義姉と一緒に行くことは叶わず、彼女はおもわぬ事故で膝をこわし、カーブスを早々にリタイヤしてしまった。
 カーブス初日の計測結果は、実年齢より10以上高い70歳台だった。
その結果のふがいなさを棚にあげて「こんな測定、毎回やらなきゃいけないなら、こないから」と、コーチに宣言する。
 永年勤めていた職場を定年退職、さらに別種の職場に一年勤務。そこで習慣になった洋菓子などのヘビーなおやつタイム。その悪習慣をそのままに、ぐうたら専業主婦になったものだからたまらない。定期受診の採血結果にバーンと現れた。
「急に中性脂肪があがりましたね。よく効く薬がありますよ」と、主治医がいう。
「くすりはのみませんから」と、その場で即答する。
 とにかくこのままではいけないと、マイカー利用から自転車にもどし、運動量をふやそうといきまいた。だが突然におきたぎっくら腰で、その構想にブレーキがかかった。
「長年の仕事のせいじゃないですか?身体がゆがんでいますよ」と、整体院の院長の言葉。その整体院から、いまだ離れられないでいる。
 昨年夏、金足農業高校の吉田くんが活躍した甲子園を入院中のベッドから応援していた。耳鼻科の手術で腫れた顔をマスクで隠し、デイルームでカーブスストレッチをし、朝夕の暗い院内を散歩して歩いた。
 退院し数週間、明日はカーブスに、今日こそは行こうと迷っているうちにかかってきた。
「○○さん、カーブスです。どうされていますか」コーチの近況確認電話だ。
「すみません連絡しないで。今日こそ行こうとおもったのですが。」
アクシデントはあったが、その電話以来、順調なカーブス通いの日々にもどった。
「調理法に気をつけてね、たんぱく質をとろうと油をとりすぎないで」と、コーチのアドバイス。掲示のポスターでその日のメニューの参考にする。そのかいあってか、中性脂肪も減少に転じた。
「こんにちは」と、カーブスのドアを開けると「○○さんこんにちは」コーチの明るい声。退職者なかま、ご近所さん、かつての同級生らがいる。
運動のさなかに顔見知りに、ぺこんと頭をさげ挨拶すると笑顔の返事が返ってくる。
ただその時間に会う、名も知らないメンバーから「おつかれさま」の声がかかる。個々のようで、ゆるやかにつながっているとおもう。
 昨年暮れ、父が転倒し骨盤骨折。年明けからは介護生活が新たに加わった。
「○○さんも自分も転ばないように筋トレがんばろう!」コーチからの励ましの声。日々のアクシデントの終わりはないようだ。
 日常のペースが整いつつある今日このごろ。
心身ともに落ちついたら、まだ訪れていない地を探検しに、ひとり旅に出かけようとおもう。