カーブスエッセイ大賞2019結果発表

作品詳細

佳作

「体操女子への道」

之子様(64歳) カーブス中神駅前(カーブス歴:2年)

 福生の日本語学校で、私は教師をしている。
学校というところは、案外、「体力勝負」の世界である。
学生はすべて外国人留学生だ。また、母国で高校や大学を卒業したばかりという若者達であるので、対する教師も「体力」がなければやっていけない。
私は体力だけは自信があった。が、もはや、還暦を何年も過ぎた身である。
「体力だけは自信がある」のではない。「自信があった」のである。

 「カーブス」は、仕事中時々行くことがある、「福生市本町」にあった。
また、二つ隣の駅の拝島にあるスーパーの近くにもあった。
「女性だけの30分健康体操」
というキャッチフレーズが気になって仕方がなかったが、扉をたたく勇気がなかった。
 子供が小さい頃は、「ママさんコーラスグループ」で作った「エアロビ」の教室で、週1回のエアロビを楽しんでいた。が、正社員で働く今は、スポーツをすることが難しい。
 娘は最近会社の駅伝クラブに入り、皇居の周りで練習などもするそうだ。
「ランニングが無理なら、ウォーキングをしたら」
などと勧められるが、ウォーキングとはいえ、続けるのは結構難しい。
「運動が出来ないジレンマ」みたいなものに、私はいつしか陥っていた。

 そんな時である。春の初めの、ある朝だった。玄関に、1枚のチラシが入っていた。
「体験レッスンに来ませんか?」
チラシの文字が、胸の中にストンと落ちた。
私の家と、青梅線中神駅の中程に、「カーブス」があるのは知っていた。
(よし、今度の土曜日に行ってみよう!)
不思議なほどに、迷いはなかった。
体験レッスンは、それだけで、
「ああ、ここは『私の体操教室』だ!」
と、私に思わせてくれた。何よりコーチとマシンがいい、と私は素直に思った。
もう何年も前から通っている「着物教室」も、「英会話教室」も、それぞれいい所はあるのだが、冷静に考えると、
「こんな部分は、無駄なんじゃないかな」
などと思える所が、多々あるのだ。
カーブスには、「無駄な所」が全くない。
マシンと、コーチと、そして仲間の女性達と、自分の体と真摯に向き合っていれば、30分という時間が、身体と心にしみわたって行く。
30分が1日の中で、キラキラと輝く貴重な時間となる。

「これからは、カーブスと付き合って行こう!」と私は決めた。
「週に何回来ても構いません」と、コーチは言ってくれる。
とは言え、仕事は定時で終わっても5時半であるから、平日はそんなには行けないに違いない。
なんとか週に1回、土曜日だけは行こうと自分に言い聞かせる。
無理は禁物だと思ったからだ。
土曜日、12時頃に行こうと支度をしていたら、コーチから電話が掛かって来た。
「今週、まだいらしてないですね」
「あ、今から出るところです」
言いながら、これではまるで「蕎麦屋の出前」みたいだなと思って、少しおかしかった。

 日本語学校で、出席の悪い学生に、
「どうしましたか?学校に出て来なさい!」と、怖い声で電話を掛ける時がある。
先生から電話をもらったときの学生の気持ちが、少しわかったような気がした。

 1週間ほど前、春にレクリエーションで行く「よみうりランド」に、2人の先生達と一緒に「下見」に行った。
「よみうりランド」は、山を利用して作られているようで、平坦な道はない。つまり高低が思った以上にあるのだ。
「視察」というものは、疲れるものであるのは覚悟していたが、坂道を登ったり下ったりしたおかげで、その日は私も含めて3人とも、かなり疲れて学校に帰還した。
「でも、雨でなくてよかったですね」
30歳近く年下の、女性の部下が言う。
「観覧車からの眺めも良かったものね」
視察は、大成功である。

 ところが翌日のこと、一緒に視察に行った部下が、出勤するなり顔をしかめて言うのである。
「昨日、たくさん歩いたおかげで、凄く足が痛いんです!先生、痛くはないですか?」
「全然、痛くないわよ」
私は言い放った。
私は知っている。私がどこも痛くないのは、カーブスのおかげであることを。
カーブスの体操のおかげで、私はその朝、足も腰もどこも痛くなかったのである。

 最近は、1週間に2回から3回程のペースで、カーブスに通っている私だ。
「先生は、『体操女子』ですものね」
若干の「尊敬」を込めて、部下達は言ってくれていると、私は思う。。
普通なら、「お局様」とか、「女帝」などと言われている所だろう。
それが、「体操女子」と呼ばれて、尊敬されるとは。これも、「カーブス」のおかげだ。
私はこれからも、体操女子への道を、一歩、一歩と歩いて行く。

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