(1)老老介護不安に向き合う
カーブスに入って四年になります。四年前夫八十二歳、私七十九歳、歴とした後期髙齢者です。夫はこの年に頸椎狭窄症で手術をした。後遺症として手のふるえがあり、食事や衣服の着脱、排泄の時、そして歩行困難等々年々に介助の手が必要となることを考えるようになりました。ディサービスでリハビリも様々の機器を利用して頑張っていますが、現状維持を続けるためと、本人も納得した上で頑張っているという現状です。
四年前の二月のある夜中のこと。トイレに起きた夫がベッドの横に倒れたまゝ、尿をもらして、起き上がろうともがいている時に私は目を覚まし、無我夢中で夫を起そうと頑張りましたが、体重38キロという私の体力ではどうにもなりません。それでも力をふりしぼり横向きにした夫の胸部にバスタオルを巻き、ヨイショヨイショのかけ声で奮闘。夫をまたいだり引きずったりしてやっと半身を起し、あわてて暖房をつけ、夫の体を拭き、パジャマを着がえさせ、やっとのことでふとんに寝かせることが出来て、安堵したら涙が出てしまいました。これからこの様なことが続くのであろうかと、介護の大へんさに直面して初めて、老老介護のきびしさを思い知りました。そして何よりも私自身が倒れることがあってはならぬと、これからの暮しを改めて真剣に考えました。
(2)カーブスを教えてくれたKさん
夫のことがあって二、三日後の夕方のこと
近くの知り合いのKさんがバイクを出してお出かけのところでした。
私「あら、これからお出かけですか?」
Kさん「カーブスに行くんですよ」
私「え!こんな時間から?」
Kさん「夕方七時までなので、都合のいい時間をやりくりしていけるからいいのね」
私「カーブスってそんなところなの」
Kさん「一度カーブスに見に行ってみて・・・女性だけで筋トレの楽しい所ですよ」と。
街のドラックストアのある角に「カーブス」の紫の看板があるのは見かけていましたが、行ってみようという気はしませんでしたし、私がかゝえている夫の介護とは結びつけてなど、考えもしませんでした。Kさんの「女性だけの筋トレ」が頭に残り、明くる日勇気を出して訪ねることにしました。
Kさんからお話を伺ったこと、私八十歳になろうとする年齢ですが・・・と遠慮がちに申しますと「ようこそ、どうぞこちらへ」とにこにこしながらコーチの方のすヽめで中に入りました。
見渡しますと、ほんとに女性ばかりマシンとボードが室内に丸く並べられて、みなさんがリズムに合せて体を動かしておられます。筋トレというとかなりはげしい、力強い動きかと想像していましたが、会員のゆったりとした表情で、楽しそうに―という印象を受けびっくりしました。
コーチからの説明を聞くため向き合って席に付きました。「現在お困りのことありますか?」と私の体のことから質問されましたが、私は自分のことより夫のことを話し、老老介護が現実のことになり不安であること、日頃の生活にこれからが心配であることなど、グチもいっしょに聞いてもらいました。コーチの方は、真剣に私の話をずっと聞いてくださいました。そして、「大変でしたね、高齢化社会と云われますが、人それぞれにまたご家庭ごとにご苦労も様々ですからね。ご髙齢のお体には、思いもよらない変化も生じますからね。ご主人様も奥様もご苦労されていること、よく聞いています。私たちは、お一人お一人がいつまでも元気で過されるためのお手伝いをさせて頂きます。病院ではありませんので、体の痛いところがあれば決して無理をしないで頂きたいし、ゆっくり、やさしく動かしながら続けて頂くことで、痛みが治まれば、慣れるまで体を動かして頂くとか、その方とともに考えながらお手伝いしたいと考えています。また筋肉は髙齢にかヽわらず、どんどん筋肉は減っていきますから、髙齢になられてからでも大丈夫ですよ」と、体の仕組みや筋肉の重要さをわかり易くお話して頂きました。
学生時代、体育理論で、たしか教わったっけと遠い昔のことが思い出されもしました。コーチのひと言ひと言に目からうろこのような思いで聞き入りました。私は残り少ない人生であることをとらえ、無駄な時間はなしで、楽しもうと思いました。
(3)カーブスに入って四年をすごして
今ではカーブスの時間を定時間でなくとも一日の日課として、行ける時間に自転車で向う私。今日はどうしようかな・・・と思うことも正直ありましたが、やっぱり行こうと出向き、みなさんと共にマシンに向い、そしてストレッチをひと通り終った時、やっぱり来て良かったな・・・と、何かをなしとげた満足感を感じるのです。にこやかに挨拶を交す仲間も増えて、ここでは八十三歳になった私も、同世代の友人のような気持になってうれしくなります。
街角でカーブス仲間の笑顔あり
 老期に得たり若き友うれし
カーブスは筋トレのためだけでなく、楽しみが他にあることも知りました。新しい方との出会いは勿論のこと、保育の仕事を長年やってきた私には、再び仲間との出会いがあること、保育園での教え子のお母さんと筋トレをしている今、時々、お子さんの成長の様子、結婚したことなど、カーブスでの出会いのおかげで、時には昔話が出来たり、「先生も頑張ってくださいね」と、お母さん方に励まされたり、退職して二十数年すぎた今、カーブスで、お互いに筋トレに励みあう、新たな友だち関係がうまれたと、とてもうれしいことです。
この前も夫は「おまえは元気でいいな・・・」と云います。「うんカーブス様々よ。上手に筋トレしてたくましくなるからね」という私に、「頼むよな」と笑う夫です。
私の住む街は土地の起源でみますと海だったようで、地形的に坂の多い街です。私がよく出向く社会福祉活動センターには、帰りにはどちらを廻っても、わが家へは坂道となります。若い時は難なく自転車で登った坂道も年々おとろえた私は、自転車を押して登りました。ところが最近は、自転車のペダルを踏み、ここまで来られたから、えい!もう少しと坂を登り切ります。友人に報告します。「え?あの坂を自転車で登り切れたの?」とびっくりしています。友人はびっくりしながら、「あなたのあとに続くよう頑張るわね」と云います。
階段を二拍子のうたでカーブスへ
確と「自分軸」に楽しく向いて