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膝痛には筋トレ? 安静? 正しい対策 3ステップ 【理学療法士監修】

目次

変形性膝関節症など、加齢による筋力の衰えなどが原因で、40~50代から膝痛の症状に悩む人が増えていきます。ひざに痛みがあると運動なんて…と思うかもしれませんが、いつまでも安静にしていればよいわけでもないようです。
膝や腰など関節の痛みと運動のスペシャリストである理学療法士の大渕修一先生に、膝痛の正しい対処法についてお聞きしました。

<お話を伺った先生> 
                                                                                             

大渕 修一(おおぶち しゅういち) 先生
理学療法士・医学博士
東京都健康長寿医療センター研究部長、高齢者健康増進事業支援室研究部長。
介護予防の第一人者として長年、患者のリハビリテーションや人の健康寿命を延ばすための数々の研究に取り組む。

膝痛があるとき、「いつまでも安静に」は間違い?

動かさないと関節に栄養が回らない

Q.日ごろから医療の現場で患者さんと接するなかで、間違った膝痛対策をされている方は多いのでしょうか。

大渕先生
 そうですね。壮年期以降の方は、相対的に安静にし過ぎている人が多いと感じています。なぜなら、若いときは傷がすぐに治るので、体もすぐに動かすのですが、歳をとると傷がなかなか治らないので、安静期間も長くなりがちです。

安静にして何が問題かというと、関節に栄養が回らないことです。関節の栄養とは、骨と骨の間にある「関節液」で、それが循環することで関節の健康は保たれています。しかし、関節液は心臓のように自動的に循環するシステムがないため、関節を動かさないと循環しません。つまり、安静期間が長いと関節液が循環せず、かえって治りが悪くなる可能性があるのです。

急性期を過ぎたら動かすことが大切

Q.では、どれくらいの期間、安静にすればよいのでしょうか。

大渕先生
 関節の痛みは、2つに分けて考えることが大切です。それは、「急性期」の痛みと「慢性期」の痛みです。

急性期の痛みは、痛めてから1ヵ月以内くらいの痛みで、それ以降が慢性期の痛みになります。急性期には、やはりしっかり休ませること。RICE処置と言いますが、Rest(安静にする)、Icing(冷やす)、 Compression(圧迫する)、Elevation(心臓より高くする)が基本で、これをしっかりやることで炎症を鎮めることが大事です。

壮年期以降の方のなかには、「これくらい大丈夫」と思ってRICE処置をしっかりやっていない場合があるようです。でも急性期のときは、私は「むしろ杖をつくくらいでいいので、しっかり休めましょう」とおすすめしています。でも、それを過ぎたら、関節液を循環させるために、どんどん動かしていくことが大切になります。

慢性期の痛み、動かし方は?

水を軽くかき回すイメージで

Q.痛みが完全になくなるまで待つのは、休ませ過ぎということでしょうか。

大渕先生 そうですね。若いときは治ってしまうのですが、壮年期以降になると治りが遅いので、痛みが完全になくなるまで待っているとかなり遅れてしまいます。そうなる前に関節液を循環させて、痛みを少しずつ取り除いていく。そういうイメージで動かしていく必要があります。

皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか。たとえばコロナ禍など、ずっと座っている時間が長いとかえって関節が痛いということがありませんか? それと同じで、安静が続くとやっぱりよくないのです。だから、急性期が過ぎたら可及的速やかに動かすようにします。

動かし方は、関節液を循環させるように、水を軽くかき回すようなイメージです。これを私は「草津温泉療法」と呼んでいます。

Q.軽くかき回すということで、草津温泉療法なのですね(笑)。では、うまく動かすために、どのようなことに気をつければよいでしょうか

大渕先生 関節液をうまく回すために大事なことは、荷重しないことです。たとえば歩いているとき、ひざ関節はよく動いているわけですが、荷重していると過負荷になりやすいのです。だから急性期のときは荷重しないこと。椅子に座っているような位置で、ひざに負担をかけないように足を動かすことが大切です。関節がくっついている状態ではなく開いている状態で、ゆらゆらと動かします。

痛みが出る手前まで、大きく動かす

大渕先生 動かす範囲については、「痛みの手前まで」。痛みが出ない範囲で、できるだけ大きく動かすことが大切です。先ほども言いましたが、心臓のように循環の役割を担っているので、1日3回とかではなく、気がついたときに、いつでもいいのでできるだけ動かすようにしましょう。動かしながら「心臓の代わりをしているんだ」というイメージを持つとよいと思います。

Q.荷重をしない、つまり体重をかけないで、浮かしたような状態で、できるだけ大きく、痛みがない範囲で動かすということですね。

大渕先生 そうです。「痛みがない範囲」というのが大事です。

痛みのレベルを言語化する

Q.動かし方を徐々にステップアップさせていく方法はありますか?

大渕先生 この「関節液を回す」ための運動で大切なのは、運動の前後をくらべて、運動を始める前より後のほうが、痛みのレベルが下がっているべきだということです。やり過ぎると、痛みのレベルが上がってしまうので注意が必要です。

まずは、この「痛みスケール」を参考にして、自分の痛みのレベルを言語化してみましょう。運動をする前に、いまの痛みがどれくらいなのか、0が「まったく痛くない状態」で、10が「いま考えられる一番ひどい痛み」と想定して、2なのか、3なのか、そこに傍線を引くイメージで想像してみてください。

そして、運動をした後に、痛みがどうなったのかを確認します。もし、痛みのレベルが上がるようであれば、それは動かし過ぎです。つぎからは回数を半分くらいに減らします。もし、痛みがやわらぐようであれば、その運動を続けたり、あるいは少しずつ増やしたりしてもよいということです。これが、動かし方の第1ステップになります。

筋トレでステップアップする

関節液を回す運動だけでは足りないので、つぎは筋肉を鍛える筋力トレーニング(筋トレ)をしましょう。はじめは、膝関節に圧力がかからないように、荷重をかけないようにして、足をふらふらした状態で行います。これが第2ステップです。

この段階で、また「痛みスケール」を使って、痛みのレベルを確認します。運動後、痛みのレベルが下がってくるようになったら、本格的な筋トレを行います。大腿(太もも)筋を鍛えるスクワットのように荷重をかけた筋トレで、これが第3ステップになります。
このように、ホップ、ステップ、ジャンプしていくのです。

Q.痛みの度合いを言語化して、痛みのレベルを見極めながら、荷重をかけない運動から荷重をかける筋トレへとシフトしていくのですね。

大渕先生 荷重をかけない運動から、荷重をかけない筋トレ、そして荷重をかけた筋トレへと、レベルアップしていくということです。

Q.これを続けることで、徐々に痛みがラクになっていくのでしょうか。

大渕先生 そういうことです。多くの人が、なかなか痛みが治らないと言いますが、それって、動かしたほうが治りますよ、ということなのです。今回の話のように、3ステップを案内することで、自然と痛みがよくなる患者さんもいて、「リハビリの先生いらないね」って言われます(笑)。

ステップアップの時期を見極める

Q. 痛みの対策には3ステップあるということですが、時期の見極め方はあるのでしょうか。

大渕先生 人によって個人差がありますが、大体2週間に1回くらいのペースで痛みの状態を確認し、痛みがよくなっていれば、つぎのステップに進むとよいでしょう。そのとき、痛みが前より悪くなっているようであれば、そこにとどまることも大切です。

そうやって2週間くらいの間隔で様子を見ながら、少しずつステップアップしていくイメージを持つようにします。早い人だと2週間でつぎのステップに進む人もいますし、4週間くらいかかる人、6週間くらいかかる人もいる、という感じですね。

-2週間前とくらべて、改善しているのであれば、つぎのステップですね。

大渕先生 よくなっているか、毎日確認するのは、やり過ぎです。そうすると、痛みのメカニズムで、痛いわけではないのに脳が「痛い」と記憶してしまうことがあるからです。よく子どもが「ポンポン痛い」と言っているうちに、本当にお腹が痛くなることがありますよね。あのように、刷り込まれてしまうのですね。だから毎日確認するのではなく、2週間に1回くらいのペースで、よくなっていれば、つぎにいくというのがよいと思います。

-脳が記憶してしまう痛みがあるのですね。

大渕先生 そうやって毎日確認することは、昨日は痛かった、今日は痛くない、明日は…と、「痛い」ということを繰り返し覚えさせる作業になってしまうのです。それで「私は痛いのだ」というのが脳のなかに刷り込まれていく。自分で暗示をかけてしまう。だから、毎日ではなく、2週間に1回くらいにしたほうがいいのです。

-大変勉強になりました。ありがとうございました。

【監修】 大渕 修一(おおぶち しゅういち)先生
<プロフィール>
1993年 米国ジョージア州立大学大学院 卒業、2000年 北里大学 医学博士取得。
「アジア健康長寿イノベーション賞」「保健文化賞」「理学療法科学優秀論文賞」
「日本理学療法学術大会大会長賞」など受賞歴多数。
著書に「70歳からの筋トレ&ストレッチ」「健康寿命の伸ばし方」など。

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