正しい血糖値ケアには運動が不可欠! 間違ったダイエットにご注意を【医師監修】
年齢とともに、血糖値が気になるようになった…、健康診断で「血糖値が高め」と言われた…ということはありませんか? 血糖値を下げるために、間違ったダイエットをすると体に不調が出るだけでなく、逆効果になりかねません。
ここでは、糖尿病の運動療法の第一人者である順天堂大学大学院の田村好史教授にお聞きした血糖値の正しいケアをご紹介します。
間違ったダイエットをしていた女性の経験談
則子さん(60歳)
医師から「完全なる糖尿病ですね。今日から薬を飲みましょう」と言われた則子さん。とにかく、「糖尿病から脱出しなければ!! 薬を飲まなくてもいい生活をしなければ!!」と、以前から医師に言われていた「週3回の運動と腹八分目+間食なし」を実践することに。
とはいえ、「つらいのは嫌。我慢も嫌」「その昔、スポーツジムに通ったが、つまらなくなって2~3ヵ月で辞めてしまった」ことから、「運動はやらなくてもいいか」という結論に。
食事制限だけで、1ヵ月で5~6キロほど体重は減りましたが、今度は「やたらと疲れるようになり、そのうち、2階まで階段をのぼるのもやっとになってしまった」そうです。
「やはり、運動は必須なのか!!」そう気づいた則子さんは、「カーブスに週3回通うことを生活習慣とする」ことにしました。気づけば、半年あまりで体重10キロ減。筋肉も増えて、疲れ知らずに。そして、薬を処方されてから数ヵ月後、医師から「これなら糖尿病の薬はやめても平気そうだね」と言われたそうです。
※経験談は、女性だけの30分健康フィットネス「カーブス」が実施するカーブスエッセイ大賞に寄せられた実際の作品をもとに紹介しています。
専門家の先生に聞きました!
Q. なぜ血糖値が高くなるのですか?
田村先生:
血糖値が上がる原因には、「遺伝的な要因」と「環境的な要因」があります。遺伝的な要因として、インスリン(血糖値を下げるホルモン)が出にくいという体質があり、家族に糖尿病の人がいる場合、リスクが高くなると考えられています。
環境的な要因とは、「運動不足」や「食生活の乱れ」などです。運動が不足している状態で、食べすぎたり、飲みすぎたりすると、体に脂肪が蓄積していきます。そうすると、インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)になります。その状態が続くことで、血糖値が上がってしまうのです。
Q. 血糖値が高いと、どんなリスクがありますか?
田村先生:
血糖値が慢性的に高い状態が続くと、糖尿病と診断されます。自覚症状が乏しいため、放置されている例も多いのですが、糖尿病で高血糖の状態が続くと、血管の壁が傷つき、そこにコレステロールが蓄積することで、動脈硬化につながります。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳卒中など、突然死のリスクを高めてしまいます。
また、糖尿病には「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」という三大合併症があります。これらは、足の切断、失明、人工透析など、生活の質を大きく下げる要因になってしまいます。
Q. 太っていないのに、血糖値が高いと言われました
田村先生:
太っていると糖尿病になりやすいのは事実ですが、じつは痩せている人も同じくらい糖尿病になりやすいことがわかっています。その原因は、インスリンが出にくいという体質とともに、筋肉の量や質に問題があると考えられています。
筋肉には、血液中の糖分を取り込んでためておくタンクの働きがあります。筋肉が少ないと、タンクの容量も少なくなるので、血糖値が上がりやすいのです。
また、筋肉のなかに脂肪がたまっている「脂肪筋」だと、インスリンの効きが悪くなり、血糖値が下がりにくくなります。痩せている人にも、脂肪筋の人はたくさんいます。
つまり、筋肉の量が少なくて、質も悪い人は、太っていなくても血糖値が高くなりやすいのです。
Q. ダイエットをすると、血糖値が下がりますか?
田村先生:
糖質をとり過ぎると高血糖になるので、とり過ぎないことは大切です。かといって、過度な食事制限をすると、脂肪だけでなく、筋肉も減ってしまいます。筋肉が少ないと、血液中の糖を取り込む力も弱まるため、血糖値が上がりやすくなることにつながります。とくに、たんぱく質が不足すると、筋肉が減ってしまうので、逆効果となってしまう可能性があります。
食事は栄養バランスに気をつけて、「ゆっくり食べる」「野菜やたんぱく質(おかず)を先に食べる、炭水化物は最後」など、血糖値が急激に上がらないように食べ方も工夫するとよいでしょう。
Q. どうしたら、血糖値を下げることができますか?
田村先生:
血糖値を下げるためには、食事と運動の両面で考える必要があります。食事については、糖質(炭水化物)の過剰摂取を避けること。具体的には、ご飯、パン、麺類、イモ類、甘いもの、ジュースなどは、とり過ぎないようにしましょう。筋肉を増やすために、たんぱく質をしっかりとりながら、バランスのよい食事を心がけることが大切です。
そのうえで、運動は不可欠と考えるべきです。とくに、筋肉を増やす運動(筋トレ)をするのがおすすめです。筋肉が増えると、血液中の糖分を体内に取り込む力が高まるので、血糖値が上がりにくくなります。
また、ウォーキングなどの有酸素運動も、筋肉のなかに脂肪がたまる「脂肪筋」を防ぐのに役立ちます。したがって、血糖値対策には、筋トレと有酸素運動の両方を取り入れるのが理想的と言えるでしょう。
最後に
田村先生 以前は、血糖値が高い人=太った人でしたが、医学の進歩で、痩せている人も太っている人と同じくらい、むしろ、それ以上に危険だということがわかってきました。「体重が少なければいい」「痩せていればいい」わけではありません。糖尿病に限らず、運動不足はあらゆる病気の原因になるということを忘れないでほしいと思います。
【監修】 田村 好史(たむら よしふみ)先生
<プロフィール>
1997 年 順天堂大学医学部医学科卒業。2000 年 カナダ・トロント大学生理学教室
に研究生として留学。2005 年 順天堂大学大学院医学研究科修了。
2017 年より国際教養学部グローバルヘルスサービス領域教授。2024年より順天堂
大学大学院スポーツ医学・スポートロジー/代謝内分泌内科学 教授。著書に「今度こそできる! 糖尿病運動療法 サイエンス&プラクティス」
女性だけの30分健康フィットネス カーブスとは
女性だけの30分健康フィットネス「カーブス」は、筋トレ・有酸素運動・ストレッチを組み合わせた運動ができるフィットネスクラブです。1人ひとりの体調や体力によって強度を調整することができるため、無理なく安全に運動をすることが可能です。
1回の運動はたった30分、予約不要で予定も立てやすいため、通っている方の継続率が97.7%と高いことも特徴です。プロのコーチが運動をサポートするので、運動が苦手な方、不安がある方でも心配いりません。