さあ、息子二人も結婚し、これから夫婦で楽しまなきゃと思っていた早朝、晴天の霹靂と思わせる衝撃が走ったのは五年前。出勤前の夫の異変、脳梗塞でした。
それから三回転院し、夫はリハビリとの試練が続き、私は病院と自宅を行ったり来たりと、自治会役員の責務や孫の世話も重なり、目まぐるしい日々の連続でした。半年後に退院、効あって自宅で療養生活を過ごせるようになりました。右半身まひ等の神経障害の後遺症は残るものの、軽い散歩もできるまで回復しました。が、如何せん、気持が不安定でまだ若く仕事に意欲を燃やしていた矢先の発症で、本人にすれば悔しくて歯がゆい思いが錯乱していたのでしょう、うつ病に始まり自殺願望、暴言暴力行為と目に余る状態がずっと続きました。介護する私も尽くしても尽くしても思いが届かず、夜も眠れず、枕を濡らす事も度々で、ストレスに限界を感じる葛藤の日々でした。患者の苦痛はもちろん、家族などの介護者にとっても苦しい事なんだと当事者になって改めて痛感しました。

自分自身、何か良い息抜き方法はないだろうかと思い悩み模索していたある日、新聞の折り込みチラシが目に留まり、駆け込んだのがカーブス入会のきっかけでした。若い人だけのクラブではとおそるおそるドアをくぐると、意外や、私と同年代の人でフロアはあふれ、表情もいきいきと楽しそうに動き回っていました。スタッフの丁寧な説明を受け、その雰囲気に飲まれ、即入会手続きでした。
十数年来、高脂血症の診断を受け、服薬も続けていて、その度に医師より、
「何か運動をしなさい」
と勧められていました。帰宅後、夫にもその旨入会を打診、運動の大切さは理解し、快く賛成してくれたのは何より救いでした。若い頃から運動は苦手で、ウォーキングも長続きせず、カーブスもすぐ飽きてやめるのではという危惧も感じぬまま早一年。今や私の生活から切り離せない日課になっています。
「来店した時は沈んだ暗い表情だったけど、明るい顔になりましたね」
とスタッフの嬉しい一言も。

夫の発症以来、身体的にも家事すべての作業が私一人に重く乗しかかり、時には重い物を運んだり、庭の樹木の整理、金網フェンス張りの力仕事など。比例してひざの痛みや肩こりもひどく、正座はもちろん、階段の上り下りも手すりにぶら下がるように難を感じる日々でした。それが今はベランダの洗濯物干しにトントントントンと軽やかに駆け上がっています。それに加え、卵巣嚢腫、子宮筋腫、更に二年前、腎臓腫瘍とこれまで三回開腹手術し、腹筋もそれに伴って伸び、脂肪と共に緩みっぱなし。それが徐々に毎日のワークアウトで腹圧を高める事で引き締まり、太腿もセルライトでぶよぶよしていたのが、心なしか固くなってきたように感じられ、筋トレの効果を再認識しています。今まで毎年のように風邪をひき、一旦かかったら完治するまで二ヶ月、暖かくならないと治らないという体質も、免疫力が高まったのか今年は風邪知らずです。
また、カーブスがショッピングデパート内にある事が幸いし、夫も通院リハビリが休みの日は一緒に同乗し、私がワークアウト中、階段上下や店内散歩してリハビリに繋げています。
「明日も体操行くの?僕も行ってもいい?」
と尋ね、ほほ笑みを返すと嬉しそうに前夜の内に身支度の準備をしています。その姿は、一年前まで私に苛立ちをぶつけていた人とは思えない程、愛しさを覚えます。失いかけた夫との絆も取り戻し、気持が私自身とても軽くなりました。今はこの人を守る為に私自身が体力をつけて、元気で頑張らなければと前向きに考えられるようにもなりました。今年のバレンタインチョコも義から愛へ変わり、きっといつもより美味しく感じたに違いありません。

更に嬉しい事が。
「おはよう」
と一人、二人と明るく笑顔をかわす友人が増え、オープン前の数十分、お互いの悩みを相談したり、情報交換したりが毎日の楽しみになってきました。そして数ヶ月後のスタッフ企画の昼食会で意気投合したのがきっかけでした。最初は十数人のメンバーが集まり菓子やドレッシング作りの講習。次はそれぞれが得意料理を一品ずつ持ち寄っての昼食会。赤飯や各種惣菜、スープ、デザートとテーブル狭しとばかり並び、賑やかな昼下がりでした。秋の日、このグループを楚々としなやかに咲くコスモスの花に、凛として生きる女性の姿を重ねて「こすもす会」と名付けました。回を重ねるごとにメンバーも増え、今年の松の内も過ぎし頃、新年会を計画しました。スタッフの方々にも声をかけたら快く参加して頂きました。それはそれは童心にかえったように楽しいひとときでした。
ひとしきりお腹を満たした後、茶ボトルをピンに見立てたボーリングゲーム。日頃のワークアウトの成果をとみんな真剣な眼差しでボールを手にし、賞品をゲット。デザートタイムでは、特技を持つメンバーによる舞踊やカラオケの披露。そしてコーヒー、紅茶に手作り菓子や果物で顔も満面にほころびました。最後にクイズ付きあみだクジで脳のトレーニングをし、最高の盛り上がりでした。

もちろん、マシーンを使用してのトレーニングが筋肉作りに効果的な事は、テレビや雑誌でも話題になり周知のとおりです。それに加え、運動が又、心の健康にも効果があると今年初のカーブスマガジンの記事に見つけ、納得。心が病んでいては何をしても楽しくないし、長続きもしません。確かに仲間の顔を見ながら、会話もしたりしながら運動すれば心うきうき気分になれます。今、心の健康の大切さを私自身ひしひしと感じています。これからも続く限り、縁あってカーブスに通う仲間作りを通し、励まし合いながら楽しく絆を深めていきたいと思いを巡らせています。
新年会の翌日、心身共にリフレッシュし、夫を乗せて握るハンドルも軽やかに、
「腹圧を高めて!」
とスタッフの声が響く中、いつになく心も体も弾んでいました。