「ねぇ、今度ちょっと一緒に行かない?」母からカーブスに誘われた時、内心戸惑った。だって、カーブスは年配のお姉様方(笑)が行く所で、まだその仲間入りするには若い!と自負していたからだ。
 幼い頃から運動オンチの私が、子育てを卒業して始めたのがフラダンス教室通い。やっと1年経った頃で、覚え立ての踊りが楽しくてたまらなかった。優しい音楽に合わせて、ゆったりと踊る事に癒やされていたから、正直他の運動まではしなくて良いかなと思っていた。ただ、母が何か怪しい団体にだまされているといけないから・・・と、見学に行くことにした。
 教室に入ると、トレーナーらしき人が満面の笑顔で「こんにちは!フミコさん!」と母の名前を呼ぶ。おぉ!70代の母が名字でなく名前で呼ばれるのかと、びっくりした。いや、母だけでなく、次々と教室に入ってくる高齢のお姉様方の顔を見て、コーチ(後から名称が分かった)は、スラスラと名前を呼びかける。驚いたことに、名前で呼びかけられた母は、まるで少女のように顔を紅潮させ笑顔で答えていた。父からも子どもからも、「おい」とか、「お母さん」とか呼ばれても、名前で呼ばれることが無かったから、すごく新鮮に感じる。
 「じゃあ、お先に行ってくるね」と私に告げ、さっさと筋トレの機械へ進む姿は半年の経験から慣れたものだ。椅子に座って見学してると、まぁ母の楽しげなこと!意気揚々とマシンにチャレンジしている。
 母も運動とは無縁の人生を送ってきた。書道の師範でもあり、いつも座って習字の練習をしていた。前屈みの姿勢が多く、小柄な身体が年々小さくなっていくのは、仕方ない事かと見守っていた。それが、ニコニコ笑顔でマシンを動かす姿は背筋も伸び、生き生きしている。「いいですね、フミコさん!その調子で!」コーチに励まされると、更に笑顔があふれ、「ありがとうございます」と答えている。母の新しい一面を見て感動した。母の誘いだから仕方なく、見学だけと思って行っただけだったのに、自然と自分もやりたい!と感じ、その場でコーチに「私も入会させてください」と頼んだほど。
 その日、帰宅した夫にカーブス入会したと伝えると、半ばあきれたように「いつまで続くかねぇ」と呟く。「ふん!見てなさいよ!」長年ピアノ講師をしてきたから、コツコツ練習は得意。「継続は力なり」も経験して実感してきた妻を甘く見るなよ!(笑)
 翌日から早速カーブス通いが始まった。コーチがマシンの使い方を丁寧にワンツーマンで指導してくださる。「サチコさん!その調子!」満面の笑顔で褒められると、50代の私でも素直に嬉しい。そうだ、私って褒められて伸びるタイプなんだ(笑)初めは毎日同じ時間に通っていたから、顔馴染みのメンバーさんも増え、お互いに挨拶して汗を流す。コーチがチーム対抗の努力目標なんか企画してくれるから、自分のチームの点数が伸びるように、これまたせっせと通い、壁に貼られた点数表にシールを貼る。幾つになってもシールを貼るのは楽しい!特に自分のチームが接戦なら尚更のこと。もう、カーブスが私の生活の一部となり、苦しいこと、嫌なこと、悲しいことがあった時は特に、カーブスに通い、無心で身体を動かし、帰る頃は気分もスッキリ。また、コーチの笑顔と励ましにどれだけ勇気をもらったことか。
「大丈夫!私はまだ元気に動ける!」と自分に言い聞かせ、幾つもの山あり谷ありのこの3年間を、乗り越えることができた。
 もうあと少しで4年目突入の3月、新型コロナウィルスの影響で、カーブス教室が1週間も閉鎖・・・毎日の習慣が絶たれた喪失感。家で一人ストレッチしても寂しい。そうだ、やはり頑張りを褒めてくれるコーチの存在が「豚もおだてりゃ木に上る」の私には必要なんだ!たった30分の筋トレ教室だけど、身体の筋肉と同時に、心の筋肉(心の支え)の向上にどれだけ効果があるのか、気付かせてくれた閉鎖期間だった。
 再開した教室は、換気や消毒、マスク着用と、メンバーさんもコーチもお互いを気遣い、筋トレを始めた。それは3分に1回の頻度の手の消毒や水分補給という徹底したもの。マシンも頻繁に消毒している。これだけ対策してもらえるから、安心して通える。何より、コロナにおびえて、じっとしていると筋肉が落ちて体力も免疫力もが落ちる。今こそ筋トレの大切さを再認識する機会なのだ。
 「ピンチはチャンス」私はいつもそう自分に言い聞かせて生きてきた。今は全世界に蔓延している新型コロナウイルスに打ち勝ち、明るい未来を切り開くために、立ち止まって考えるチャンスなのだ。一人一人が今までの生活を見直すチャンス。カーブスの筋トレが、みんなの健康維持に役立つチャンスと信じる。