カーブス「秋田オーパー店」が今年の三月十九日で開店二周年を迎えた。開店とほぼ同時期に入会した私も同じく時を刻み、筋力を付ける事に目覚め、有意義な日々を過ごすことが出来たことに感謝している。
 私は秋田駅から電車で三十分ほどの地域に住んでいる。秋田駅に向かいあったホテルの厨房に午前中のみ勤務して十二年になる。
 洋食の惣菜を作り、ホテルと隣接するデパ地下に提供するのが私の仕事だ。七十二歳の私は料理部門で最高齢だが、今だに好きな料理を続けられる職場環境と、それに対応できる自分の健康を(ありがたい)と思っている。
 カーブスに入会したのは仕事帰りの駅にむかう通路で「三十分で筋力がつく」と声をかけられたことがきっかけだ。立ち仕事のため足が重だるく膝に違和感を感じていたこともあり興味を持ったので覗いてみることにした。室内は活気が感じられ、コーチのもとでトレーニングする皆さんの表情の明るさと活気が伝わり、心地良く感じた。
 コーチの熱心な説明を受け、早速体験してみる事にした。休日に気功を組み入れた体操教室に十年以上通い続けてきたので、体力には多少自信があり、簡単にこなすつもりがいきなり筋力の衰えを知る事になった。足を使うマシンの操作がとても重く感じた。
 退職の年齢をとうに過ぎ、会社の雇用契約更新時には数年前から退職を覚悟してきた。それでも「まだまだイケるね。」と丈夫さを見込まれて更新を続けてきた。仕事は遣り甲斐があり、私の生き甲斐でもある。歳はいっても会社が望む限り、自分の好きな仕事と趣味をこれからも思う存分楽しんで生きていきたいと思い入会を決めた。
 カーブスの午前中の門限は十二時半までだ。午前八時から惣菜を作り、翌日の仕込み分を終わらせ自分の昼食の時間も入れて午前中の営業に間に合わせるには十一時半までには全て終えさせないといけない。時間との闘いが始まった。昼食を抜くと時間に余裕があるのだが、社食のランチは美味でボリューム満点。私の至福の時だ。到底昼食を抜くことは考えられない。料理長に相談したら、「身体を鍛えるのは良い事」と私の仕事に協力するように計ってくれ、週二回のペースで通えるようになった。
 二週間が過ぎた頃、仕事帰りに買い物の荷物を持ち、駅の階段を降りるのが重く辛いと感じていたのが、手すりに頼らず、スタスタと足取り軽く降りる自分に気がついた。さらに休日に地元のスーパーまで買い物に行くのだが、自転車で休みながら行くため二十分かかっていたのが、直行で自転車を漕ぎ十分で着いた。休日にやりたい事が山ほどある私には時間短縮は貴重なことだ。
 私の公休は火曜日と金曜日だが、火曜日は体操の日、金曜日は歌唱愛好会の練習、月二回は絵手紙サークルと盛りたくさんのスケジュールだ。どれも好きな事であり、これからもずっと続けていきたい。歌唱同好会では毎年童謡コンサートを催しており、今年も練習が始まった。
 この時期の私は夜明け前に起き、家事を済ませ六時四十分の早電に乗り、厨房に入ると即座に一心不乱で仕事。社食での昼食後カーブスに行き、一時の電車で帰宅するとすぐに自転車で歌の練習会場に向かう日々だ。以前の私は遅れても笑顔で迎えてくれる先生を思い、少しでも早く着くように必死でペダルを踏むが、途中の急な登り坂では仕事後の疲れもあって、足が上がらず、途中から自転車を押して歩くのが恒例になっていた。それがカーブスに通うようになって一気に坂道を登り切れるようになった。また何より嬉しかったのは「声が高く響くようになった」と先生に褒められた事だ。背中に筋力がついたお陰だ。
 たった三十分のトレーニングで筋力がつくとは信じられなかった私だが、実際に自分の身体に効果が見えるとまた更にやる気が出てくる。通ううちにいつも一緒になるメンバーの皆さんの身体にも成果が現れていると気がついた。そうなると又期待が沸いてくる。
 始めは日常生活が楽になったと気づいたくらいだが、半年を過ぎた頃には多少細くなったウエストと背中の肉がとれてすっきりした自分を姿見で確認でき、思わずニンマリしてしまった。
 何をするにも継続するのは難しいが、応援してくれる人がいると力になる。
 秋田オーパーのコーチは皆さん、とても親切で熱心だ。入会してすぐに名前を憶えてくれ親しみを感じた。褒められてテンションが上がり、助言には「そうか」と思う私だ。帰りに「ひさ子さん、お疲れ様!」と声をかけて貰うと(今日も頑張った!)と自分を誉め、また明日も頑張ろうと思う。
 一年を過ぎた頃プロテインを薦められた。食べることが大好きで逆にタンパク質の取りすぎを心配している私には必要無いと思っていた。いつも一緒になるメンバーがトレーニングの後で飲むプロテインで身体の変化が見られ効果があるのを感じた。コーチから「食事の量を少し加減して飲んでみたら」とのアドバイスを受け、現在挑戦している。髪が以前よりフサフサしてきて効果を感じる昨今だ。私が体の中で最も気になるところは胸が大き過ぎる事だ。視線が気になり、薄着で人前に出られない。Tシャツ一枚で颯爽と歩く人を羨ましく感じていた。しかし、小さくするのは無理だろうと諦めていたが、最近贅肉がとれたせいか、以前より目立たなくなった気がする。胸の大きさがめだちすぎて着れずにいた数年前に買ったドレスを今回の童謡祭には(ぜひ着たい!)と欲が出てきた。ドレスを着てハイヒールで颯爽と舞台に立つ姿を夢見てカーブスに通い続けていた。
 そんな時に新型コロナウイルスの感染で世界中に震撼が走った。勤務するホテルも交代で休暇を取る状態になり、カーブスも一週間の休みになった。
 何時何処で何が起こるか分からないものだと痛感しながら遣れることをするだけと気持ちを切り替えて渡されたテキストを見て自主トレーニングに励んだ。再開されて目的に向かって行けるのが嬉しく、筋力への思いが更に強くなった気がする。
 昨年は私の人生にとって大転換期だった。二人の子供があっという間に結婚を決め、家を出て行ったからだ。いきなりの一人暮らしは淋しくて心が折れそうになったが、子供が巣立つのは当たり前だ。子供たちの明るい未来図が見え、これで良かったと思う。
 令和は「人生百年時代」と言われる長寿社会だ。まだまだ先は長い。今後は自分の力で最後まで好きな事を続けながら自由に「一人暮らし」を楽しんで生きたいと願う日々だ。