それは二年前の春の出来事です。新年度が始まり「よし、今年も頑張ろう。」と大好きな職場で好スタートを切ろうとした矢先、突然異変が起こりました。きっかけは私と上司による単純な思い違い。上司の機転で直接的な問題は直ぐに解決しましたが、私の重大な問題はここから始まってしまったのです。
 今までは見過ごす事の出来ていた点が急に気になりだしたり、同僚の何気無い一言がずっと胸に突き刺さってしまったり、日増しに感情の起伏が激しくなっていくのを感じる様になりました。今となっては更年期障害の始まりだったかと理解出来ますが、当時の私はただただ毎日を不安に思うばかりでした。
 こんな私を心配して上司や同僚、本当に沢山の方が優しい言葉を掛けてくれました。それなのになかなか素直に耳を傾けられない私。いつしか「どうせ私なんて。」が口癖になっていました。このままではいけないと思いつつ一向に出口が見付けられないまま数ヶ月。気付くと体重は十六キロも落ちていました。
 一キロ減らすのも大変だったのに...。そう思った瞬間、ふとカーブスに楽しく通っていた頃を思い出しました。父が脳梗塞で倒れた時も母が大腸癌で入院した時も、そして私自身に乳癌が見付かった時だって辞めようと思わなかったカーブス。それなのに今はカーブスに通う事すら忘れているなんて。
 久し振りに恐る恐る扉を開けるといつもと変わらぬ笑顔のコーチが私を出迎えてくれました。変わり果てた私を見て「有美子さん、まずはハグされに来て下さい。」
「えっハグを?」
戸惑う間も無く私をギュッと抱きしめてくれたコーチをいつまでも忘れる事は出来ません。私よりうんと若い彼女が「人生、色々な事がありますよね。別に体を動かさなくても良いんです。ここに来て少しでもホッとして下さいね。」と。私は溢れる涙を止める事が出来ませんでした。
 結果的に離職をする道を選びましたが、コーチの一言で少しずつ自信を取り戻し、職場での人間関係も良くなりました。人に甘えたり頼ったりする事を覚えた私は体力も戻り、今も元気にカーブスで汗を流しています。