やかんを持つとき、二の腕がぷるぷるふるえる。ここ。ここ。私の二の腕のこの筋肉が働いてる、働いてる。
 

 カーブスに入会してから、私は自分の筋肉がいとおしくて、いとおしくてたまらない。
階段を登る時、一段、二段、三段、まだまだ来ないぞ。十段超えたあたりから、そろそろかな。そろそろハムストリングスがぷるぷるするぞ。ほらきたほらきた。おお、右、左。ぐうっと張ってきたぞ。あっと登り終わっちゃった。
 万事、こんな風だ。体を動かすということが、すなわち筋肉を動かすってことなんだ。カーブスで、マシンを使って筋トレをするようになってから、自分の体が筋肉で覆われているのだということを実感する機会が増えた。
 歩くときも、自転車に乗るときも、私は筋肉を使って移動しているのか、と改めて思ったりする。あれ、そうすると、自分の心臓も、胃も、もしかしたら、筋肉のようなものかしら。などと考える。自分の意志は及ばないけど、内蔵だって筋肉が収縮して動くってことか。
カーブスに入会してから、私は自分の体について、進んで考えるようになった。ただ何気なく日常生活を送るだけでは、自分の体についてまで考えることはほとんどない。仕事、人間関係、お金、ファッション、家事、などなどほかにいっくらでも考えなくてはならないことがある。体のことは、痛いところがなければとりあえず後まわし。私はそうして四十数年を過してきてしまった。
それが、いい加減この肥満体をなんとかしなくっちゃ、と思い、友人に誘われてカーブスに入ったのをきっかけに、体のことを、日常生活の中で考えるようになった。私にとっては大きな進歩だ。というか、発想が大きく変わった。。
 米びつまで米袋を運ぶ。それまで当たり前のように主人に頼んでいた作業だったが、最近は、自分で運ぶ。主人のように一度で総てを運ぶことはできないが、何度か休みながら三十キロほどの袋を移動させる。二の腕、肩、胸、腰。私の筋肉がぐいっと動くのがわかると、カ・イ・カ・ンなのだ。
 

 今日もカーブスで筋トレをしてきた。週に一~二回しか通えないが、私の日常は確実に変化した。自分の体について、積極的に考えるようになった、という点だ。油圧マシンでスクワットをしながらふと思った。今まで足が細くなったらいいなとか、おなかの脂肪がとれたらいいな、とかいつも思っていたが、筋トレをするようになって、足を細くするためにはどうすればいいかな、おなかの脂肪をとるにはどの筋肉を鍛えればいいかな、と考えるようになった。自分で自分の体を変える。自分の体は自分でつくっているんだ。と、強く思うようになった。
 駅までの道を歩いてみよう。自分の足で。自分の筋肉で。疲れるほどに筋肉を動かせる、その幸せをかみしめる。筋肉バンザイ。私、バンザイ。おなかの脂肪がまだあるけれど、私のいとおしい筋肉が少しずつ退治してくれるであろうことを信じて。