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東北大学 加齢医学研究所との
研究結果②

結論

1回の運動でも、認知機能(抑制能力)の一部が向上

・サーキットトレーニング群の方が、対照群よりも「認知機能(抑制能力)」「活力」が向上しました

The Role of Cognitive Control in Age-Related Changes in Well-Being
Ayano Yagi1, Rui Nouchi2, Kou Murayama1,3, Michiko Sakaki1,3 and Ryuta Kawashima2
1Research Institute, Kochi University of Technology, Kami, Japan
2Institute of Development, Aging, and Cancer (IDAC), Tohoku University, Sendai, Japan
3School of Psychology and Clinical Language Sciences, University of Reading, Reading, United Kingdom
BRIEF RESEARCH REPORT article
Front. Aging Neurosci., 09 July 2020

研究の背景と目的・概要

背景と目的

背景 超高齢社会に突入した日本において認知症は非常に重要な健康問題です。2012年の段階で、約462万人、65歳以上の約7人に1人が認知症であると推計され、2025年には730万人にまで増加し65歳以上の約5人に1人が認知症を発症すると推定されています。今後も認知症を有する高齢者が増え続けることは想像に難くなく、身近な疾患となりつつある状況下において、認知症に対する関心は益々高まっています。
高齢になるとともに認知機能は低下し、基本的な日常活動を実行する上で困難を生じさせます。近年の高齢者は、健康ブームから、サーキットトレーニングに取り組む方が増えていますが、サーキットトレーニングは、30分という短時間でできることから高齢者でも取り組みやすく、筋力向上や生活習慣病の改善などの効果が得られることがわかっています。従来の研究では、運動は1回実施しただけでも即時効果があることや、高齢者がサーキットトレーニングを4週間実施した場合、認知機能が向上するという研究はありましたが、サーキットトレーニングの即時効果については、ほとんど研究が行われていませんでした。
目的 30分のサーキットトレーニングを1回実施するだけで認知機能と気分に及ぼす即時効果を検証すること

研究概要

対象 40歳以上80歳以下の女性64名
1)右利きで日本語を母国語とする
2)週に1回以上の定期的な運動習慣がある
3)自己の記憶機能に問題を感じておらず、認知機能を妨害する薬(ベンゾジアゼピン類、抗うつ剤、その他の中枢神経作用剤を含む)を服用しておらず、甲状腺疾患、多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中、糖尿病、重度の高血圧(収縮期血圧180以上、拡張期血圧110以上)を含む中枢神経にかかわる病気の疾患既往歴がないこと
4)他の認知関連の介入研究に参加していないこと
抽出方法 広告を用いて、有酸素運動・筋力トレーニング・ストレッチを実施するサーキットトレーニングに精通した健常中高年者を募集。
測定方法 被験者64名をサーキットトレーニングを実施する「サーキット運動群(中年者16名、高齢者16名)」・なにもしないで待機する「対照群(中年者16名・高齢者16名)」に分け、無作為比較対照実験を実施。
両群ともに、1回30分の介入の前後に、認知機能検査や感情状態を聞く心理アンケートを実施。
測定項目 認知機能検査や感情状態を聞く心理アンケート

1回の運動でも、認知機能の一部が向上

結果 サーキットトレーニング群の方が対照群よりも「“認知機能(抑制能力)”」「“活力”」が向上した。
結論 認知機能は、加齢と共に低下しやすい傾向にあり、抑制能力が低下することにより、感情や行動のコントロールができず日常生活を行う上で困難を生じさせる大事な機能。30分のサーキットトレーニングを1回実施するだけで“認知機能(抑制能力)”や前向きな気分につながる“活力”が即時的に向上するという今回の検証結果は、超高齢社会に突入した日本にとっても注目すべき結果と考えられる。些細なことで苛立たないように感情をコントロールすることで人間関係を良好に保つことや、物事を前向きにとらえ毎日を楽しく過ごすことは、中高年が健康的な日常生活を営むために大変重要なことと考えられる。

認知機能(抑制能力)と感情状態の変化

  • サーキット運動群 中年
  • サーキット運動群 高齢
  • 待機群 中年
  • 待機群 恒例
  • サーキット運動群 中年
  • サーキット運動群 高齢
  • 待機群 中年
  • 待機群 恒例
  • サーキット運動群 中年
  • サーキット運動群 高齢
  • 待機群 中年
  • 待機群 恒例
  • サーキット運動群 中年
  • サーキット運動群 高齢
  • 待機群 中年
  • 待機群 恒例

その他、運動介入の認知機能に関する効果

有酸素運動、筋力トレーニングを行うと高齢者の認知機能が向上することが明らかになっています。

有酸素運動

エピソード記憶 UP!

実行機能 UP!

※for review. Smith et 9l.2010

筋力
トレーニング

処理速度 UP!

実行機能 UP!

※for review. Smith et 9l.2010

サーキット
トレーニング

エピソード記憶 UP!

処理速度 UP!

実行機能 UP!

※東北大学加齢医学研究所との
研究結果(2014)より

東北大学加齢医学研究所について

様々な国立大学法人の中で唯一、加齢医学研究を標榜している附置研究所。全国共同利用・共同の「加齢医学研究拠点」として、日本の加齢医学研究の中核的役割を果たしている。
加齢の基本的メカニズムを解明するとともに、認知症などの加齢脳疾患や難治性のがんを克服することを目的として、その目的を達成するために、加齢制御・腫瘍制御・脳科学を3つの柱として研究に取り組んでいる。加齢を個人と社会のさらなる成熟・発展ととらえる「スマート・エイジング」の実現を最終的目標として、研究所・大学の知の集結と、産学連携・一般市民参加の有機的体制で、その実現を目指している。

この件に対するお問い合わせ先

株式会社カーブスジャパン戦略企画部

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