カーブスエッセイ大賞2018結果発表

作品詳細

佳作

「母の生きがい」

内山京子様(63歳) カーブスイオンタウン蒲原(カーブス歴:1年5ヵ月)

「ごめんね。今日は仕事で時間がとれないからカーブスはお休みにしよう」
母に伝えると、間髪を入れずに、
「歩いて行くからいいよ。一人で行ってくる。運動にもなるしね」
意外な言葉に驚く。
昨年7月頃に初めてカーブスに誘った時は、一旦は行く気になったものの、確認の電話を受けると、
「何で、同じこと何度も言うの?時間だって決めてきたんでしょ?だったらそれでいいじゃない」とおかんむりで、結局「あんなところには行きたくない」
と体験の予約を断ってしまった。
確かに確認の電話に時間をとられることは、忙しい母にとって不愉快なことだったかもしれないが、私は気持ちの許容範囲が狭まり、頑固になってしまったのではないかと気になった。とは言っても、一昨年の12月に入会した私も、最初は敬遠し、あんなところには絶対行きたくないと思っていたので、行きたくないという気持ちも解るし、行きたくないのを無理に誘うほどお節介でもないので、余計なことは言わずに家を出る時、
「カーブスに行って来るね」
と声をかけ、帰ると
「行ってきました」
と報告する毎日だったが、体験を断って3ヶ月ほどしたある日、突然、
「そのカーブスとやらに行ってみようかしら」
と母が言い出した。私は平静を装ってはいたが、このチャンスを生かさない手はないと、すぐにカーブスに行って、その日の体験を予約してもらった。体験をして、自分に合わないと思うのだったら仕方がない。
ところが、体験が始まると熱心にコーチの話に耳を傾け、マシンの使い方も覚えようとする母の姿に、これは気に入ったに違いないと確信した。予想通り、その場で入会を決め契約書に記入し、帰る足取りは軽かった。
今まで老人会や敬老会の集まりには出席したことがなく、自分と同じくらいの年齢の人達の集まりを、
「あそこが痛いここが痛いって、病気の事ばっかり話して嫌になっちゃう。そうじゃなかったら孫の自慢話で退屈」
の一点張りで地域の集まりにも消極的だった。だが、それも70代半ばまで外でバリバリ仕事をして、米寿を過ぎた今でも、毎日規則正しい生活の中、ライフワークと言える洋裁の仕事を現役でこなす母としては当然の事なのかもしれないと思っていた。
毎日の家事は勿論、草取りや花壇の手入れなど休む間もなく忙しく働きながら、朝10時からお昼までと、洗濯物を取り込んでたたみ終えた午後2時から夕方までは洋裁に励む。長年携わってきた洋裁の技術は衰えることを知らず、いまだに注文服を仕立てている。
しかし、人の体は時を経るにしたがって自然と衰えていくことを、私は身を持って知っている。夫も山で転ぶことが多くなったし、義母も、圧迫骨折で入院してから歩行がおっくうになり認知症を発症し85歳で他界した。私には、母が元気で生き生きと暮らしている今の生活を維持したいという強い願望がある。家族と同じものを食べて、同じ環境で暮らし、庭の草花や採れる野菜で季節の移ろいを感じる当たり前の生活だ。母の実母も、最期まで浜松の自宅で家族と一緒に101歳まで暮らした。とってもシャレのきいたお茶目な祖母だった。母なら祖母の記録を更新するに違いないと今は確信している。
そんな私の目論見を知ってか知らずか、母のカーブス通いは始まった。コーチは勿論メンバーさんも皆さん優しくて、気軽に挨拶を交わし、笑顔で何気ない会話を交わすのがとても嬉しいようで、心なしか笑顔でいる時間が多くなった気がする。ただ、元々バレーボールの選手で、ママさんバレーでも活躍し、運動神経には自信があるとは言っても、衰え行く筋肉には抗えない。
たまたま3人のコーチが、私の3人の息子達とそれぞれ同じ年の生まれで、誕生月も近い事もあって、とても親近感を感じるらしく、コーチの発言には実に素直に従う。私としては嬉しい限りだ。最初は、マシンにも慣れなくて、
「お水を飲みに行くと、戻るのが遅くなっちゃうから」
と言って、水も持たずに通っていたが、コーチが
「お水は大事ですよ。いっぺんに飲まないで、ちょこちょこ飲んでください」
とアドバイスしてくれると、あんまりたくさん飲めないからと、小さいペットボトルに水を入れて持って行くようになった。気がつくとペットボトルには、孫娘にもらったお気に入りのアフリカの布で袋を作っていた。
母がカーブスに入会したことを東京に住む妹に伝えると、
「大丈夫なの?危なくないの?」
と案の定、心配する言葉が返ってきた。
「大丈夫だよ。すごく楽しんで通っているし、心拍数も測りながら、その日の体調に合わせて無理なくメニューをこなしているよ」
という私の説明に一抹の不安を感じたのか、私が旅行で留守をしている間に、留守番を兼ねて我が家に泊り、母のカーブスに同行した。
百聞は一見に然り、とはよく言ったもので、和気あいあいとコーチの指導の下、メンバーさん達とトレーニングに励む母の新たな一面に触れて、とても安心したようだ。妹は自分の子ども達に母の様子を伝えると、孫達からも応援のメッセージが届いた。そのことも励みになったようだ。
最初は嫌がっていた毎月の計測も、前より良い結果を出そうと努力するようになり、計測や成果を他のメンバーさん達と楽しそうに話す様子が輝いている。私も母と一緒に通うようになって、他のメンバーさんから声をかけてもらうことが多くなり、とても嬉しい。
「お母さんおいくつ?」
こっそり尋ねられることも多いが、
「89歳で、今年の誕生日で卒寿を迎えます」
と答えると、皆さん一様に驚かれ、
「お元気ですね」
と褒めてくださる。
でも、その元気の源はメンバーの皆さんとの楽しい会話や笑顔だ。最初は名前も知らない同士でも、何となく同じ時間をカーブスで共有することにより、挨拶や言葉を交わすきっかけができ、お互いの成果や努力を褒め合う事がどんなに楽しく、励みになる事かを痛感する。母の心も軟らかくなり、人を思いやることが増えたように思う。心と体は密接なつながりがあると言うが、本当にその通りで、少し位寒くても、雨が降っていてもカーブスに通って体を動かすことが、今の母の生きがいになっている。いつも見かける顔なじみのメンバーさんが見えないと心配になるし、元気がなかった方が健康を取り戻し、颯爽とサーキットに現れると、自分の事のように嬉しくなる。女性だけの限定会員ということも、柔らかく明るい雰囲気作りに大きく影響しているのかもしれない。
最近は、月に20回以上通うことも珍しくなく、トレーニングウェアやTシャツにも気を遣うようになって、ますます若返っている母だ。これも、新しいウェアやマシンの使い方をマメに褒めてくださるコーチの努力のたまものと、深く感謝している。
 否定的だった私をカーブスに誘ってくれて、今でも一緒に筋力アップを目指している友人に感謝しながら、母と共に健康で張りのある生活を続けられるよう、コーチやメンバーの皆さんと、これからも楽しく筋力アップに励んでいきたい

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