近所のカーブスに通っている。私よりちょっぴりふくよかだった友人が、週三回のペースで通い、半年で劇的にカッコよくなったのを見て、俄然入会する気になったのだ。
「洋服もぜーんぶ買い直したのよ」
 嬉しそうに話す彼女のふっくら時代は、おそらく11号を着ていたであろう。だが今や9号でも余るほどスリムになり、何を着ても似合っている。
 一方、何年も前からアクアビクス、バレエ、ウォーキングと続けているが、それほどの成果を見せない私。すでに運動量が足りないのだろうか。バレエではことに筋力が必要だと改めて感じてもいたので、地道なマシントレーニングに目が留まった。かといって、以前行った男性トレーナーがやたらと説明するジムは面倒だ。「女性だけ」というのにも惹かれた。
 会員は中高年の高年が占め、元気に動ける人ばかりの活気ある空間だ。ちょうどそのころ、一人暮らしの父の行く末を思い、寝たきりや認知症の人が多く居る施設見学をしていただけに、その差は歴然だった。加齢は平等でも老化はなんと不平等なことか。
 七十四歳で亡くなった母は、どこに行くにも車で、食べることも好きだった。
「二十代はヘップバーンにも似てた」という姿形は跡かたもなく消えた。還暦を過ぎ、膝には人工関節、最後の二年は認知症にもなり寝たきりだった。「筋肉があれば認知症にもなりにくい」。ジムの壁に貼られたポスターのひとことが胸に響く。
 筋肉は使った後の戻す時間で増えるそうだが、私はひとまず体重を産前に戻すことが目標。体質は母似なので油断禁物だ。週五回通うことに決めた。
「Mさーん、もっと腹圧入れてー!」
 会員の名をすべて覚えている女性スタッフの明るい声掛けにも気が抜けない。十二のマシンを二周したら終了、という先が見えるシステムも私には合っている。
 一年たった今、体重は四キロ減、腰回りも少しシェイプしたのか、去年パンパンだったスカートはクルリと回るようにもなった。母を原動力に、せめて母の享年までは通い続けてみようと決めた。