私は現在81才。
 先日、カーブス10年会員としてプラチナカードを受け取った。我ながらよく続いたものと思う一方で、あの14年前の「スナップ写真事件」がなかったら、今日まで頑張ることは出来なかったろうとの思いもある。大仰な言い方だが、それは、私にとって紛れもない「事件」だったのだ。
 14年前のこと、私は、友達から1枚のスナップ写真をもらった。講演会で話を聞いている私の後姿であったが、そこには眼を疑う光景が映し出されていた。なんとブラジャーの上下に、1キロほどずつの肉の塊が張り付いていたのだ。
想像だになかったその景色に、おもわず「嘘!」と叫び、これは「私じゃない」そう思って目を凝らしてみたがそれは間違いなく、赤いTシャツの自分の背中だった。
 思わずあたりを見回して、そ~っともう一度見直しても、また見直しても、何回見ても私の背中には2キロほどの肉が盛り上がっていたのである。
その時のショックと恥ずかしさは、今もはっきりと覚えている。
 当時の私の体重は68キロ。身長は163センチ。
普段、前面からしか見ない自分の姿だが、太っている自覚はあった。お腹周りのぜい肉も何とかしなきゃと常に頭にはあったが、ちょっとの「ぽっちゃり」は健康的な証だと勝手な理屈をつけて、何もしない日々を過ごしていたのだが、この写真は私のプライドを根底からひっくり返した。
 その時、初めて真剣に痩せよう、そしてこのはみ出した背中の肉を何とかしようと固く、かたく誓った。
 翌日から私は、フラダンスとスイミングスクールへ通い始めた。と、同時に食事もそれまでの7割程度に抑えた。食べることの大好きな私には辛い選択だったが、あのスナップ写真を机の引き出しに入れ、挫けそうになると、それを眺め自分を奮い立たせた。
 レストランでの好物も2割位は残した。これを1年間我慢すれば3キロは落とせるはず。あのブラジャーからはみ出た肉塊は消滅しているはずだ。その計算は的中した。1年後には体重は3キロ減った。
 しかし私の我慢はこれが限界だった。自分が考えていた目標をクリアした途端、食べることに歯止めが利かなくなった。これ位、これぐらいなら・・・そう思ううちリバウンド。2ヶ月で2キロ戻った。それでも私はフラダンスとスイミングには精をだし、それ以上の体重増加を食い止めようと必死で頑張った。
 そんな時、夫が脳梗塞で倒れ半年の入院生活を余儀なくされた。もうスポーツクラブに通っている暇はなくなったが、皮肉なことにこの看病生活で3キロやせた。だが不安な暮らしは心だけではなく身体のあちこちに不具合が出て、腰痛と坐骨神経痛に悩まされ整体に通う日が多くなった。
 そんな苛々した自分をもてあましている時、家の近くにカーブスがオープンすることを知った。30分という時間と、歩いて行ける距離というのが病人を抱える私にも続けられそうと思った。
早速無料体験に行ってみた。そのとき私71才。身長163センチ体重65キロ。最初にコーチの説明を受けながらマシン1周した私の感想と言えば「えらくしんどいナ」だった。特にレッグ・カールは脚が3回しか持ち上がらなかったし、グルードに至っては、2回蹴り上げるのが限度だった。
 思えばあの頃の私はよく転んでいた。体重の割には足が細かったので脚力もなかったのかもしれない。
2週間ほどすると身体が慣れて楽しくなった。2周はあっというまに終わり運動後の爽快さが気持転換になった。
ストレッチも入念を心がけた。
ここに週に4~5回通うと決め、TV見ながらの家事を止めて、午前中のカーブスを心がけ生活のリズムを作った。

 あれから10年、あっという間のような気もするが思い返せば、後期高齢者の我が家にはさまざまなことが起きた。夫の3度の入院と後遺症。看病と重なって「きつ~い」と思うこともあったが1度も退会しようと思ったことは無かった。カーブスに通って半年を過ぎたころから、転ばなくなったと感じるようになったし、躓いても引き戻す力がついた実感があって十数年前のように、無様に土の上に這いつくばることは無くなった。

 そしてカーブスでの1番の成果は、10年前和式トイレで立ち上がれなかった私が、外出の際、洋式トイレの長い列を横目に見て、和式で用をすますことが出来るようになったことである。
 しかしながら体重は現在も65キロ、身長163センチ10年前と全く変わらないのである。しかし体型は変わった。寸胴のおなかに、少々のくびれが出てきたし、何よりもあの恐怖の肉塊は全くない。「背中が真っすぐできれいですね」とコーチに褒められるのが私の唯一の自慢。

 筋力は継続で成る、そして筋力は健康の源・・・・
 そう思ってカーブスに通う日々である。

 今、私がひそかに夢見ていることがある。それはあと10年後「カーブスとの20年」というエッセイを書くことである。
その時にはどんななカードが来るのだろうか。楽しみにしている。