いつの間にか10年が過ぎた。10人程いた「3時の貴女」グループは次第に家庭の事情、身体の事、等でやめて少なくなり、今はたまに会うと「元気?」と声をかける程度になった。
カーブスの目立つ所にスタッフは私の写真と経歴を書いて、他の2、3人と共に張り出してある。私は「1人住いの92歳」。自分は年寄と思っていないが、多くは杖を突くか若い人に寄り添っている。
 カーブス10年は何処か痛い時だけ運動はやめるが歩幅を大きくして大きな交差点を超えると3分で着く。スタッフが時々私を呼んで新しく入った方を紹介してくれる。「90歳よ」と云うと殆どの方が驚いて下さり「よろしく」とお名前を伺う。それから家に帰ってからノートに名前を書いておく。次に行った時、その方がにこにこして下さると、即座にお名前を呼ぶ。すると時には間違えることもあるが、親しくなる。私は幸せいっぱい胸の中に感じる。一人でいると声をださない日もある。
 10年前主人が91歳で亡くなってから、毎年海外旅行に行っている。北極圏のカナダ。ノルウェー、アイスランドとオーロラを追いかけ、やっと4度目で何と美しく、素晴らしいオーロラに出会えた。それからはアフリカ、南米、東南アジア、と暖かい方へ行くが、そのことを書いてあるのを見たメンバーさんは声をかけて下さる。「ナポリ」の美しい景色、インドの神秘的な所、アラスカの氷河の話、体操が終わると自然に寄ってきて楽しい旅の話になる。
 筋トレの時コーチが近くに寄り私のお腹を静かに押して「腹筋を考えて減らしてください」という。10年前より目方は8キロも減っているのに下腹はむしろ増えている。肩の肉は落ち、ウェストは細くなっているので昔の洋服を直してもらっているが、どういうわけか下腹だけはぐっと出ている典型的なオバアサンスタイルになっている。
 名画を見習ってTシャツにアクリル画を描いて時々着て行くとそれを話題にしてくれる。家に訪ねてくる人はいなくなり、ただ1人の生活になったが、カーブスへ行くと、沢山の友人が声をかけてくれる。
 また5月にリュックを背負い、登山靴を履いて、屋久島クルーズへ出かける予定だ。いつもカーブスの方達の支援を背に感じながら。

大正生まれの 長原カーブス 郁子