「体験、行ってみない?カーブスっていう、わたし最近始めたとこなんだけど。」と、わたしを誘ってくれた友人のN子さんですが、いざわたしがカーブスマシーンを体験し、入会したと知ると、「えーっ、ビックリ!一応声はかけたけど、誘っても体験にすら行かなんじゃないかと思ってた。なのに、入会までしたのーっ。」
 N子さんの著しい反応が示していたように、わたしは自他ともに認める、身体動かない動かせないニンゲンです。小学校入学時に担任の先生から、先天的な四肢の麻痺を疑われたのを皮切りに、体育の成績は、5段階評価でも10段階評価でも、不動の評価2を戴き続け、あまりの身体能力の低さに、剣道部の新人戦に出ることも許されませんでした。集団球技では、結果的に相手チームに加勢しているかたちとなるのが常でした。自転車では、今でも路上に出れません。ううう。体力や気力に満ち、機敏に動ける方から見れば、まるでわたしはありがたくないおばさんの置き物のようだったと思います。


 若い時分から運動音痴だったわたしが、ますます老化し硬化する度合いを深めていく過程には、両親の死や、それにともなう諸般の出来事や、自らの病(幾度かの手術による臓器摘出)など、人並みに山あり谷あり谷底ありの年月がありました。
 ストレスの影響で、40歳そこそこで閉経を迎えましたので、骨密度もあやしい数値、自己否定の気分が強く、表面は明るくつとめていましたが、きっとセロトニンさん発生率極めて低く、真っしぐらに心身とも暗い方へと落ちていっていたと思います。
 それでも、好きなヒンディーフィルム(インド映画)のダンスシーンを真似て踊ってみせると、「S子ちゃん、体育2だったって嘘みたい。身体、柔らかいよ~」と旧友に言わしめさせてしまう、マシンガンダンサー(笑)の側面もあり、わたしがカーブスを体験してみた理由のひとつも、『このまま筋骨スカスカくたくたになったら、わたしのダンサーとしてのポテンシャルが下がってしまう。華麗な舞いを、披露できなくなってしまう、友人から笑いを取れなくなってしまう。わたしにとっては、死活問題だっ』というものでした。(ここは、笑わないでください。本人は真剣であります)


 そして、実際に体験でカーブスのマシーンを動かした時です。筋肉と骨の繋ぎ目あたりから、ちっちゃな粒つぶのまん丸ニコちゃん達が、次々と湧いて出てくるような、適度な筋肉の運動に、まさに身体が喜んでいる実感を得たのです。即日入会しました。
 し、しかしです。「こんにちは、S子さん」コーチの方に、明るい笑顔で迎えられると、『え、ファーストネームで呼ばれる仲ではないのだが』と、もうどうしていいのかわからなくなるわたしがいました。
 物事を、あらぬ方向へいたずらに突き詰める考え方が、決して良い結果を生まないことを経験してきたはずなのですが、ぐっと肩に力が入ったまま固まってしまうのです。悲しい習いでした。
 そしてまた、サプリメントも健康食品も、お酒を飲んだ時のように直ぐに効き目が現れないことに、常日頃不満を表明していたわたしには、1~2週間通っても、目に見えて著しい結果には繋がらず、メイクが捩れるかもしれないリスクを抱えながら、たたじわっと汗をかくために通い続けるのかと考え始めたとたんに、カーブスへ向かうことが、難しくなっていきました・・・。表面は笑顔であっても、まだまだわたしの本質は、偏屈でヘタレで変人、への字なおばさんだったのです。
 コーチの方々は、いつもにこやかで親切ですし、マシーンも常時清潔に整えられています。それなのに、わたしは、
「や、辞めます。お世話になりました」「いつでもいたしてください」
「またお世話になります」「再びようこそ、S子さん」
「お世話になりました。退会します」「いつでもお待ちしています」
「あのう、また再開したいのですが」お待ちしてましたよ。今日からですか、勿論、大丈夫です。S子さんっ」
を、繰り返す日々を、昨年半ばまで送っていました。極めて勿体無いことをしてしまったと、今では強く反省の、への字、改め、新生「はの字」なおばさんです。


 わたしの場合、カーブスを退会してやや経る頃には、必ずや、階段の上り下りが辛くなってきます。十数年間作り続けているヨーグルトの容器の蓋を、開けづらくなります。すぐに肩が凝りますし、それがたやすく頭痛へと展開していきます。
 カーブスから離れて、筋肉からニコちゃんマークが出なくなると、心からもニコちゃん物質(セロトニン?)が放出されなくなるようです。するとわたしは、だんだん昭和の冬場の蝿のように、じっと動けなくなってしまうのが常でした。


 ところで、カーブスには、わたしより年上の女性も、多くいらっしゃいます。時々、直接お話しをするわけでなくても、女性としての人生の先輩の方同士の、ちょっとした会話から、丁度わたしがぶつかったり抱えたりしている事項への、ヒントや諭しになる言葉が、降ってきたりするのです。(つい会話を小耳にはさんでしまうわたしをお許しください)これはとても得難い、カーブスならではの筋トレのおまけです。
 結果から申しますと、2年前の入会時、67Kg近くあったわたしの体重は少しづつ減り、現在51Kg前後という状態です。
 レモン味のプロテインは、退会期間も毎日続けていました。炭水化物や脂肪分の摂取調整は、我ながら本当に頑張りました。極力こらえました。でも、お酒はちっとも控えませんでした。わたし的には、ここもポイントです。(汗)
 やはり、細く長く地味に継続することが何事も大事なのだな、と基本のキに、我が意を得たり顔になって、感慨深げに振りかえってしまうわたしです。


 今、この体験文を書いているうちにも、筋肉からニコちゃん達を解き放ちたい衝動に駆られてきました。さて、プロテインとお水をバッグに詰めて、出掛けようかと思います。